<高校総体:みちのく発>

 久しぶりに水泳取材に関わっている。若さをうらやむ年齢になったが、実は高校まで水泳部だった。まだスイミングクラブが珍しかった当時、仙台市に誕生した仙台スイミングスクールの選手コース1期生。だが、憧れのインターハイは遠かった。その全国大会に今は仕事で関わっている。

 何もかもが様変わりした。今大会の男子100メートル平泳ぎの標準記録は1分5秒07。72年ミュンヘン五輪金メダルの田口信教さん(60=鹿屋体育大教授)の優勝記録(1分4秒09=当時の世界新)を、14人がエントリータイムで上回っている。水着はスパッツ型全盛で黒系一色。選手の見分けがつけにくい。女子も同様だが、ひざ上までのセパレートタイプは、36年ベルリン五輪・女子200メートル平泳ぎ優勝の前畑秀子さんの時代をしのばせる“クラシック型”に逆戻り。時代は巡るの好例だろうか。いずれにしろ、個性と華やかさが失われたのは惜しまれる。

 ところで今大会、被災県を含む東北6県の競泳出場は計39校から男子76人、女子48人の計124人。残念ながらランキング上位の選手は数少ない。各地に温水プールが誕生し、通年練習できる環境下で、震災後の燃料不足で各施設が閉鎖され、1カ月以上も練習できなかった選手が多い。

 競泳初日の17日、被災した岩手沿岸の釜石の水泳部員19人が観戦した。震災の影響で短縮された夏休み最後の日に、地元開催の全国大会を肌で感じた。東谷美紅さんと藤井美羽さん(ともに1年)は「今年はみんな負けてしまいましたが、来年は出場できるように頑張りたい」と口をそろえた。【佐々木雄高】