【グロスター(英国)10日=岡崎悠利】日本代表WTB藤田慶和(22=早大)が、11日(日本時間12日)の米国戦先発に起用された。1次リーグ3戦は出番がなかったが、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が「直感」で選出。最終戦で悔しさを晴らすべく、チーム最年少の快足がピッチに立つ。

 8日夜にスタメン入りを告げられた藤田は「発表されるまでずっと不安だった」と明かした。南アフリカ戦の大金星をベンチで見守るなど、ピッチのすぐそばにいながら出られない日々が続いた。「チームが勝てたことは本当にうれしかったけど、貢献できていない悔しさがあった。出たい気持ちが強かった」。03年大会決勝のオーストラリア-イングランド戦を見て以来ずっと目標にし続けたW杯のピッチに、手が届いた。

 東福岡高時代から日本代表候補に選ばれるなど「怪物」と呼ばれた逸材。早大でFBの位置を不動のものにするホープにとって、出番がない今大会は経験のない挫折でもあった。「悔しい気持ちだけじゃダメなので」。折れずに努力した。試合前日にレギュラー組が調整する一方、コーチに申し出てスピードトレーニングをした。試合当日も、翌日も走った。ジョーンズHCは「直感で選んだ。藤田の状態が良かった。適任だと判断した」と、がむしゃらな努力に期待を寄せた。

 早大の先輩、五郎丸を「兄貴分」と慕う。初戦から第2、3戦とメンバーから外れた時も、五郎丸から「必ずチャンスがくる。準備しておけ」と励まされた。「恩返しするプレーがしたい」と藤田。五郎丸は「実弟のような存在。一番悔しい思いをしてきた。暴れ回ってほしい」と背中を押した。

 対戦相手の米国もWTB、FBが武器のチーム。藤田は得意の攻撃だけでなく、守備でも「体を張って前でとめる」と誓った。「この日のために4年間やってきた。責任を果たしたい。勝ちたい」。怪物が目を覚ます時がきた。

 ◆藤田慶和(ふじた・よしかず)1993年(平5)9月8日、京都市生まれ。WTB、FB。東福岡高で1年からレギュラー出場し花園3連覇。早大1年時の12年5月、アジア5カ国対抗戦のUAE戦で、18歳7カ月の最年少キャップ。7人制でも日本代表。184センチ、90キロ。代表キャップ数28。