羽生結弦(21=ANA)が、まさかの逆転負けを喫した。ショートプログラム(SP)で2位に12・04点差をつけて2季ぶりの優勝を狙ったが、世界歴代最高得点を更新した2度の演技を上回る「完璧」を目指したがゆえに心身のバランスを崩した。4回転ジャンプで転倒するなどミスが相次ぎ、合計295・17点で2年連続の2位に終わった。SP2位のハビエル・フェルナンデス(スペイン)が2連覇した。

 羽生がまさかの大逆転負けを喫した。約12点ものリードがありながら「滑っている時はずっと緊張していた」。最初の4回転サルコーで斜めに体勢が崩れ、氷に手をつく。続く2つのジャンプは成功するも、後半の4回転サルコーで転倒。立て直して必死に滑り終えると、両手を膝に置いてうなだれ、背中で息をした。

 SP2位のフェルナンデスに抜かれた上に、19・76点差。SP首位から逆転負けするのは昨年の世界選手権に続いてシニアで4度目。逆転され、2ケタも離されたのは初めてだった。記者会見では「I wanna do again(もう1度滑りたい)」とぽつり。今季最後の演技だからこそ、後悔が強く残った。

 完璧を求めたからこその失敗だった。今季は昨年11月のNHK杯、12月のグランプリ(GP)ファイナルでSP、フリー、合計ともに歴代最高得点をマーク。それでも「まだ完璧じゃない」と構成を見直した。フリーの後半の4回転トーループ-3回転トーループを「曲のリズムに合っているから」と、4回転サルコー-3回転トーループに変更。より美しさと完成度を求めた。だが、失敗した。「跳びたい、いい演技をしたいと思ったのが、欲張った結果として悪い方向にいってしまった」と空回りを認めた。

 体も本調子ではなかった。ずっと抱えていた左足の故障が、連戦後の年明けに悪化。調子を合わせてボストン入りしたが、今度は右足甲にも痛みが生じた。近しい関係者でも羽生に足の状態を聞くと、いらだちを見せるほどだったという。言い訳にはしたくなかった。

 「とても悲しい。自分の過ちに後悔している」と言いつつ、悔しさは「今出しちゃうと自分を抑えられなくなっちゃうから」と胸にしまった。世界歴代最高点を次々と更新し、男子史上初のGPファイナル3連覇を達成しても「この舞台で金メダルを取れないようじゃ、まだまだだなと思った」。また越えるべき壁を見つけて、うれしそうに笑った。【高場泉穂】