女子100メートル自由形B決勝で、リオデジャネイロ五輪代表の渡部香生子(20=JSS立石)が56秒03で1位になった。今大会の最終種目。午前中の予選で9位と決勝進出を逃し、7月の世界選手権(ハンガリー)代表を逃した。12年ロンドン五輪から毎年、世界大会に出ていただけに、6年ぶりの代表落ち。ショックはあったが、最後は予選よりタイムを上げてB決勝トップと、意地は見せた。

 悔し涙は流したが、どこまでも気持ちは前向きだった。「代表になれなかったのは残念ですが、久しぶりにやり切ったレースができた。ここ1年くらいは、レースに出ることが怖かった。最近の中では、とても良い試合になった」。苦闘の1年を振り返るように言った。

 15年世界選手権では女子200メートル平泳ぎで金メダルを獲得した。リオデジャネイロ五輪の金メダル候補へ一気に浮上したが、その肩書が自らを苦しめた。五輪金メダルを期待する周囲の声が重圧になる。本番の五輪では得意の200メートル平泳ぎで決勝にも進めず惨敗に終わった。

 帰国後、心機一転で練習を始めたが、昨年12月、陸上練習中に、右足首を捻挫。本格練習は2月に入ってからで、今大会も万全では迎えられなかった。メンタルも体の状態もボロボロだったが「泳ぐことが好き」との原点を忘れることはなかった。「今大会は楽しめて、ワクワクして泳げた」と代表落選も悲観せず、再出発への1歩ととらえられている。

 世界選手権代表は逃したが、8月ユニバーシアード大会(台湾)出場は確実。「ここで終わったわけではない。まだまだ伸びしろはある。ユニバーシアードでは世界選手権代表より速く泳ぐと決めている」と前を見た。そして最後には「人間として、選手として成長できるようにしたい」と殊勝に言った。昨年リオデジャネイロ五輪金メダルの金藤理絵(28)は何度も引退危機を乗り越えて栄光にたどりついた。「1日1日、練習を続ければトップに戻ってこれると信じている」。挫折を乗り越えたとき、最強の香生子が復活する。