違法カジノ店での賭博行為で無期限の試合出場停止処分から約1年2カ月ぶりに復帰したバドミントン男子の桃田賢斗(22=NTT東日本)が涙の復活優勝を飾った。決勝は日本代表の上田拓馬(28)に、今大会初めて1ゲーム落とすなど苦戦。最終ゲームも最後までもつれたが、再びプレーできる喜びと感謝の気持ちをコートにぶつけ、競り勝った。優勝が決まると、謹慎中の苦闘を物語るように号泣した。

 苦しい日々が、頭を駆け巡った。優勝が決まった瞬間、桃田はひざまずく。額をコートにつけると、約20秒動けない。起き上がると、大粒の涙が頬を伝った。違法賭博による1年以上の謹慎生活。「つらいときに支えてくれ、競技環境をつくってくれた方々への思いが込み上げてきた」。表彰式でもあふれるものは止まらなかった。

 日本代表の上田との決勝戦。第1ゲームは難なく奪うも、第2ゲームはスピードを上げた相手に戸惑い、今大会初めて失う。1-1で迎えた最終ゲームは一進一退も16-18と追い込まれた。後がない状況だったが、ここで上田がチャンスボールをミス。勝機は逃さない。強烈なスマッシュなどで4連続得点で逆転。最後は相手のシャトルがラインから外れ、ゲームポイントを制した。

 試合後、ユニホームで涙を拭いたとき、見えた背中には何本ものテーピングが張られてあった。「体力的にきつく、精神的にも折れそうになった」。約1年2カ月ぶりの実戦。元世界ランク2位も、心身ともに限界に達しつつあった。接戦を制する力になったのは「支えてくれた方への恩返し」の思いだった。