日本男子テニス界を、杉田が引っ張る。世界9位の錦織圭(27)が右手首のケガで、今季すべての大会を欠場することを16日に発表。これを受け、日本NO・2で世界46位の杉田祐一(28=三菱電機)は、錦織不在の間、自分がテニス界を盛り上げると決意を新たにした。その言葉どおり、ジョアン・ソウザ(ポルトガル)に逆転勝ちし、2年連続で3回戦に進出した。

 錦織に「仙人」と呼ばれた孤高の人は、心意気の人でもあった。錦織欠場を聞かれた杉田は「彼が戻ってきた時に、日本のテニス界が盛り上がっているように(自分が)頑張りたい」と話し、身をもって示した。

 2回戦は「体がなかなかフィットしていなかった」と振り返ったとおり、思うようなプレーができなかった。試合中に修正し、逆転で勝利に結びつけた。試合前には、錦織のニュースを知っており、彼の心に火を付けたのかもしれない。

 6月の全仏3回戦。錦織は試合中にラケットをたたき折り、批判された。しかし、杉田はブログで「普段何をされても怒らないあれほど温厚な彼が、あそこまで無理やりテンションを上げて状態を維持しようとしているということの意味を私は理解しています」と、おもんぱかった。

 14年ウィンブルドン。4大大会の予選に18度目の挑戦で、ようやく本戦切符をつかんだ苦労人だ。だから、思い通りに行かない錦織のつらさも手に取るように分かる。「どうにかして踏ん張りたいという(彼の)強い思いは、私に大きな価値をもたらしてくれます」。刺激を受けた錦織をおそった悲運。今度は杉田がプレーで引っ張っていく。