エース渡部暁斗(29=北野建設)が今季初優勝を果たした。荻原健司の19勝に次ぐ、日本勢2人目の2桁勝利となるW杯個人通算10勝目に到達した。前半ジャンプ(ヒルサイズ=HS142メートル)で142・5メートルを飛んで首位に立つと、後半距離(10キロ)も独走でそのまま逃げ切った。24日の開幕戦に続き、これでシーズンをまたいで3戦連続の表彰台に輝き、18年平昌五輪の金メダル獲得へ弾みをつけた。

 エースがさらにギアを上げた。前日の開幕戦で3位に入った渡部暁が、今季初勝利を挙げ、節目の10勝目に到達した。日本勢の2桁勝利は荻原健司に次ぐ2人目の快挙。開幕から2戦続けて表彰台に立ち、平昌五輪での金メダル獲得を視界にとらえた。

 前半ジャンプは、強風だった前日から一転、風が収まり、ほぼ公平な条件だった。低い姿勢からしっかり力を伝え飛び出すとグンと伸びて142・5メートルのヒルサイズ越え。「良いジャンプだった」と自画自賛する好飛躍で首位に立った。

 2位との差が16秒の後半距離。逃げるか、力を温存して後続を待つか、迷いが生じても不思議はなかったが、序盤から独走態勢に入った。「意外と余裕を持って走れた。後ろが(集団で)けん制しあってくれたのもよかったし、いろいろうまくかみ合った。こういうレースができればいい」。最後は2位に31秒7の差をつけた。

 前日は個人総合5連覇中のエリック・フレンツェル(ドイツ)ら強豪が軒並み低調で「参考にならない」と話すほどの悪条件だったが、この日は違う。安定した条件でフレンツェルらも飛距離を伸ばしたが、それを上回るジャンプを見せた。さらに、後半距離も五輪本番と同じ10キロ(前日は5キロ)。今後につながる価値ある1勝だった。

 開幕前の直前合宿で転倒し痛めた左脇腹は「結構、痛い」とまだ万全ではない。それでも「完全に体調が戻って、さらにパワフルな走りができればもっと面白い」と表情も明るい。日本勢悲願の個人金メダルへエースはこのまま突っ走る。【松末守司】