元世界4位で同27位の錦織圭(28=日清食品)が壁をひとつ乗り越えた。同295位のケプファー(ドイツ)に7-6、6-3のストレート勝ち。09年に右ひじのけがで1年離脱し、10年の復帰2、3戦目はベスト8止まりだった。苦戦しながらも、まずは復帰からステップアップだ。準決勝では同234位の荘吉生(台湾)と対戦する。

 錦織にとって、今は、とにかく勝利が復活への薬だ。内容よりも、試合数をこなして勘を取り戻し、自信をつけること。それが、またひとつ可能になった。「前の試合より良くなっている。ここからさらに頑張らないといけない」。ツアー下部大会とはいえ、1勝1勝が大きい。

 この日も、第1セットはよたよただった。先に相手のサービスゲームを破り先行しても、すぐに追いつかれる。武器のフォアハンドは、コントロールが定まらない。それでも、「危ない試合ではあったけど、いいストローク戦もたくさんあった」と、ストレートでけりをつけた。

 10年に復帰した時は、復帰戦で痛みがぶり返し初戦負け。「その時が、一番、苦しかった」と打ち明ける。その後、復帰2戦目まで2カ月を要した。2、3戦目はベスト8。4戦目で下部大会に優勝し、復活の足がかりとした。それに比べれば、今回は、まだ1歩前進だ。

 ツアー下部大会で、世界ランキングを見れば、大半が3桁の選手ばかり。ただ、錦織が勝って当たり前だと思うのは、あまりにも早計だ。少しでもツアーに上がりたい若手と、けがなどでランクが落ちた経験豊富なベテランが入り乱れる場所で、勝ち上がるのはそう簡単ではない。

 次戦も、世界ランクは200位台の選手。国籍は台湾だが、生まれも育ちも米国で、ベテランの選手が相手だ。決して侮ることはできないが、2週間後のツアー復帰戦に向け、少しでも勝ち星を伸ばしたい。