女子100メートルバタフライの池江璃花子(17=ルネサンス亀戸)が、得意種目で1年7カ月ぶりに自身が持つ日本記録を更新した。予選は57秒14で全体1位通過。準決勝で56秒58をマークした。5位だった16年リオ五輪(オリンピック)決勝で出した従来の記録を0秒28更新。4種目に出場する大会の第1日から全開発進。今日4日の同決勝で再び0秒30の記録更新を誓った。実現すれば、昨夏世界選手権銅メダル相当の好タイムになる。

 50メートルのターンでタッチが合わなかった。池江は「失敗したな。予選よりも遅いな」。実際のラップは予選を0秒29、日本記録時を0秒37上回った。1年7カ月ぶりの日本新。「今、リオを思い返すと長く感じるけど、絶対出ると思った。前半いったつもりもなくて、タッチも合わなくても、タイムが出ている。2年で成長した」と笑った。昨夏の世界選手権は6位。自己記録も更新できず、号泣した。「それが原動力」。週2回の筋力トレでパワーをつけて、50メートルと100メートルの距離に絞って結果を残した。

 昨年12月23日、武蔵野の森総合スポーツプラザ。池江は、約1カ月のスペイン合宿から帰国した日の夜に、同学年で仲がいいフィギュアスケート樋口新葉の応援に行った。平昌(ピョンチャン)五輪をかけた全日本選手権、運命の女子フリー。「新葉(樋口)は演技が終わってから(客席の)私のところに来てくれた。(最終の)結果が出るまで一緒に見ていました」。演技後の樋口は暫定1位。しかし残り5人中3人に抜かれて4位になった。目の前で少しずつ遠ざかる平昌切符に泣きじゃくる友達を「これで終わりじゃないよ」と励まし続けた。

 その友達は今年3月の世界選手権に出場。転倒したショートプログラム8位から大逆転の銀メダルを獲得。映像を見た池江は「(フリーの前に)『次は絶対に転ばないでね』といったのが響いたらしいです。私も絶対にやってやろうという気持ち」と挫折を乗り越えた友達の姿に奮い立った。

 「これで終わりじゃない」は自分自身にも向けた言葉だ。「決勝でまた0秒3更新したい」と世界選手権銅相当のタイムに照準。「明日も出すし、パンパシフィックでもアジア大会でも出す。東京まで突っ走る」と宣言した。【益田一弘】