17歳の素根輝(そね・あきら、福岡・南筑高)が決勝で冨田若春(21=コマツ)を下し、史上初の初出場優勝を果たした。勝利の裏には、兄勝さん(22)の存在があった。

 最大のヤマ場は準決勝だった。17年世界選手権銀メダルの朝比奈沙羅(21=パーク24)との5度目の対戦。7日の全日本選抜体重別選手権決勝では破ったが、20年東京五輪を目指す上でも「絶対に倒さないといけない相手」だった。

 両者指導2で迎えた試合開始3分24秒。一度、有効を奪われたが取り消しとなった。「スイッチが入った。ガツガツ行かないと」。こう決めて、延長戦の末、反則勝ちを収めた。

 中学時代から地元では「無敵女子」と呼ばれ、全国の10を超える私立強豪校から誘いを受けたが「強くなれるのは自分次第」として兄が通った地元の公立校に進学した。

 地元には練習相手が少ないため勝さん(22)が付き人として支えている。素根と体格も似ていて、連日、高校の部活や自主練習に付き合って組み合う。勝さんは「輝の夢は素根家の夢でもあり、それをかなえるために家族でサポートしています」と言う。

 この日の準決勝後も柔道整復師の資格を持つ勝さんが、素根の腕をマッサージしながらリラックスさせ、決勝前の気持ちを落ち着かせていた。「お兄ちゃんのためにも優勝したかったという思いがある。1人でここまでにはなれないし、家族には本当に感謝しかない。もっともっと強くなる」と素根は話す。

 9月の世界選手権(アゼルバイジャン)個人代表には惜しくも落選したが、気持ちは柔道スタイルと同じく前へ前へ-。「世界で輝くために」と両親がつけた名前を実現するために、17歳のホープはさらに努力を重ねることを誓った。【峯岸佑樹】