16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)男子100キロ超級銀メダルの原沢久喜(25=日本中央競馬会)が、3年ぶり2度目の優勝を果たした。決勝は3連覇を狙った王子谷剛志(25=旭化成)を延長の末、指導を奪い反則勝ち。同五輪以降、不調が続いていたが20年東京五輪に向けて復調の兆しを見せた。

 2度目の日本一は恩返しだった。同学年ライバル王子谷との決勝。疲労困憊(こんぱい)の両者ががっぷり四つで組み合う、意地のぶつかり合い。延長3分過ぎ、原沢の目つきが変わった。「ゾーンに入った」。王子谷を一気に追い込み「きついのを乗り越えてギアが1段上がった。最後は気持ちと執念で勝ちきった」。9分16秒の勝負を終え、涙を浮かべた。

 リオ五輪以降、低迷が続いた。昨夏の世界選手権は初戦敗退。その後はオーバートレーニング症候群と診断され、今年1月から本格的に稽古を再開した。復帰戦の2月のGSデュッセルドルフ大会決勝では王子谷と両者反則負け。今大会はそのリベンジでもあった。所属の賀持監督とは「王子谷対策ノート」を見返し、決勝前には相手の技を受けずに「完封してこい!!」と送り出された。

 今月末には所属する日本中央競馬会を退職する。今後はフリーでの活動をしながらスポンサーを探す。入社1年目で同大会を制し、現所属最後の今大会では有終の美を飾った。「優勝という結果で恩返し出来て良かった。残り2年は柔道に人生の全てをささげる。今日の結果は今日で忘れる」。自らを律し、東京五輪に向けて再スタートを切る25歳は歩みを止めない。【峯岸佑樹】

 ◆原沢久喜(はらさわ・ひさよし)1992年(平4)7月3日、山口県下関市生まれ。山口・早鞆高-日大-日本中央競馬会。15年全日本選手権優勝。16年リオデジャネイロ五輪銀メダル。17、18年GSデュッセルドルフ大会銀メダル。世界ランキング28位。右組み。191センチ、123キロ。