男子200メートル平泳ぎで、世界記録保持者の渡辺一平(21=早大)が、主要国際大会で初優勝を飾った。体調不良で2カ月ぶりのぶっつけ本番だったが、3番手からラスト50メートルでペースアップして2分7秒75で逆転勝ち。昨年1月に世界記録を出しながら大事な試合で勝てなかったが、ホームの大声援を受けて殻を破った。2年後の東京オリンピック(五輪)では自身が持つ世界記録を更新しての金メダルを宣言した。

 規格外の才能が、ぶっつけ本番で覚醒した。渡辺は193センチの恵まれた体をいっぱいに使って泳いだ。2コースのために「周りは全く見えないし、何も見ていなかった。150メートルのターンでも目をつぶって回った」。地元の大歓声で好位置であることは分かった。「体がきつかったが、ラストはがむしゃらに泳いだ」で初優勝。世界記録の2分6秒67には届かなかったが「勝てたことが、めちゃくちゃうれしい」と喜んだ。

 無理もない。6月の欧州グランプリから帰国して体調を崩した。37度後半の発熱が続いて、練習が十分にできない。7月の東京都選手権も棄権。体重もベストの83キロから2・5キロも減った。「体調を崩すのは僕自身の未熟さです」。これまで夏場に水分をとる量が少なかったことを反省。朝起きてペットボトル1本を飲み、授業中も練習中もこまめに水分補給した。決して万全でなかったが「最近、目立ててない。目立ちたかった」と笑顔を見せた。

 勝負強さがほしかった。世界記録を持ちながら、日本選手権優勝はなし。昨年世界選手権も銀メダルの小関に次ぐ銅メダルだった。金メダルのチェプコフ(ロシア)について「彼はいつでも世界記録を出せる状態」と危機感を持っていた。

 場内の優勝インタビュー。五輪2大会2冠の北島康介氏からマイクを向けられて「あとを託していいですか?」と聞かれた。「頑張ります!」と大声で応えた。世界記録を刻んだホーム辰巳で、初優勝の「君が代」を流して「東京五輪では、僕自身の世界記録を更新したい」と金とのダブル快挙を誓った。【益田一弘】