世界9位の錦織圭(28=日清食品)が、自身最悪のスコアで沈んだ。同6位のケビン・アンダーソン(32=南アフリカ)に0-6、1-6で敗戦。1ゲームしか奪えなかったのは過去最少で、08年ストックホルムオープン準決勝以来2度目の悪夢だった。第1戦で同3位のフェデラー(スイス)から4年8カ月ぶりに勝利を挙げたが、勢いを止められた。1次リーグ通算1勝1敗となり、15日に予定するB組最終戦のティエム戦に準決勝進出がかかる。

悪夢でしかなかった。フェデラーに4年8カ月ぶりの勝利を挙げてから、わずか2日。これほど痛い敗戦が待っているとは、錦織自身も思いもしなかっただろう。「今年、最悪の試合だった」。今年どころか、テニス人生でも最悪の一戦だった。

予兆は、第1サーブが全く入らないところから始まった。「本当にサーブは良くなかった」。第1セット0-5の時点で、第1サーブが入った確率が38%まで落ち込んだ。最後の1ゲームで、少し確率を上げたが、それでも47%。得意のストロークに持ち込むどころか、サーブへの対策で精いっぱいだった。

サーブが入らないと、そこばかりに気を取られる。ストロークに意識がいかなくなり「焦らされる。ゆっくりラリーができない」。加えて、苦手な使用球でもあり「コントロールできない。自分の感覚が全くつかめなかった」と、スタートからいきなり11ゲームを連取され沈んだ。

体調が悪かったり、けががあったわけではない。その証拠に、最後までもがいた。「ずっと頑張ってやっていたけどだめだった。自分の日ではなかった」。ストロークは、ネットの下に突き刺さるなどコントロール不能。さすがの錦織も、あまりの不調に苦笑いだ。

ただ、落ち込んでばかりもいられない。次のティエムに勝たなければ、準決勝進出どころか、フェデラー戦の勝利もかすんでしまう。「今日のことは忘れて、明日の練習で修正するだけ。それしか道は残っていない」。栄光の勝利と惨敗の悪夢の両方を味わった錦織が、最後の関門に挑む。【吉松忠弘】