日本体操協会は10日、都内で臨時理事会を開き、リオデジャネイロオリンピック女子代表の宮川紗江選手(19=高須クリニック)へのパワハラ行為が認められなかったとして、塚原光男副会長(70)と塚原千恵子女子強化本部長(71)に科していた一時職務停止を解除したと発表した。問題を調査した第三者委員会は、塚原夫妻に不適切な点が多々あったと指摘したが、パワハラの事実は認定せず、処分に至らなかった。

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宮川選手はこの日、1度は「信じられない」とコメントしたが、その後ツイッターで前向きに競技を続ける姿勢を示した。勇気を持ってパワハラを告発したが、それが認められず、今後は復職する塚原夫妻とうまくやっていかなければいけない。そんな複雑な心が見え隠れした。跳馬と床運動で世界トップクラスの実力を持つ宮川選手は20年東京オリンピック(五輪)代表の有力候補だ。けが人を抱えた今回の世界選手権では、代表辞退した宮川選手の不在が響いた。塚原氏と宮川選手が和解し、選手が気持ちよく東京五輪を目指せることを願う。

8月から今回の一連の問題を取材して感じたのは、女子のトップを務める塚原本部長に対し、選手だけでなく、コーチ、協会幹部さえも声をあげられないような空気があることだった。宮川選手がパワハラを主張した後、体操界のOB、OG、先輩らが宮川選手を支持する声を上げた。塚原氏の言動をパワハラと感じていたのは宮川選手1人ではない。ある体操関係者は「後でしっぺ返しがあるのでは、と考えて、誰も何も言えない」と話した。選手が顔色をうかがうような環境を変えなければ、20年東京五輪のメダルも、体操界の未来もない。【高場泉穂】