約3300億円の巨大マネーをかけ、サッカーの元スペイン代表DFジェラール・ピケと楽天・三木谷浩史会長兼社長が企画した男子テニスの国別対抗戦、新生“デビスカップ(杯)”が、いよいよ今日1日に、12カ国で幕を開ける。

1900年から始まったデビス杯は、その間、マイナーチェンジはあったものの、2019年に大きく変貌を遂げる。

男子テニス界はプロが完全に確立し、年間を通じて個人戦の4大大会を頂点とした世界ツアーが戦いの場として隆盛を誇る。その中で、デビス杯は18年まで世界最高峰のワールドグループは16カ国。トーナメント制にすると、1回戦、準々決勝、準決勝、決勝と、開催には年間で4週を要する。しかし、年間スケジュールは個人戦の大会で過密しており、そこにデビス杯が組み込まれると選手は休む暇がない。

加えてデビス杯は、世界ランキングのポイントがつかない。賞金はあるが、各国協会への分配金で、それを協会が選手に還元する形だ。すでに国の名誉をかけた戦いと少ない賞金だけで、選手の出場をうながすには、限界に来ていた。だからといって歴史と伝統を誇り、テニス界でただ1つの公式団体戦として認識されたデビス杯を、世界のテニス界はむげにはできない。何かしらの変革は必要だった。

そこに目を付けたのがピケで、ピケが創設した大手投資会社「コスモス」が、デビス杯を統括する国際テニス連盟(ITF)と手を組み、改革案を練った。コスモスを支援するのが楽天だ。三木谷-ピケ・ラインが、25年間で約3300億円の資金を確約。11月の決勝大会(本戦)には賞金総額約22億円を用意した。

優勝を決める旧方式は、前述したように、16カ国が1年をかけてトーナメント方式で争う。1対戦はホーム&アウェー方式で、シングルス4試合、ダブルス1試合で3日間にわたり行われた。試合方式は5セット試合で、最終セットはタイブレークがなかった。

新方式はまず2月に24カ国で本戦出場決定戦(予選)を行う。各国は1対戦を行うだけで、試合数は旧方式と同じ。試合方式は3セット試合の全セット・タイブレークに変更。同決定戦で勝った12カ国が、11月の本戦に進み、前年ベスト4の4カ国、推薦の2カ国を合わせた18カ国で、1週間をかけて優勝を争う。

これだと年間2週間しか開催に必要としない。また3セット試合なので、選手への負担も軽減できる。選手本意として考え出された改革案だったが、賛否両論が起こった。強硬に反対したのが、4大大会開催国でもあり、28回の優勝を誇るオーストラリアだ。ヒューイット代表監督は「デビス杯の死だ。テニスを全く知らない金の亡者に乗っ取られた」と批判した。

しかし、錦織圭は「選手には負担が減っていい」を賛成する。ただ、個人戦のツアー最終戦ATPファイナルの直後にあるデビス杯本戦には「ファイナルに出た選手が、すぐにデビス杯に出るのは負担が大きい」とも話している。

果たして、トップ選手はこぞって出場し、新生“デビス杯”は成功するのか。そのテニス界の大改革が、今、幕を開けようとしている。