男子66キロ級は丸山城志郎(25=ミキハウス)が決勝で世界選手権2連覇中の阿部一二三(21=日体大)に延長で優勢勝ちし、2年連続2度目の優勝を飾った。

得意の内股で崩す連続攻撃で13分23秒の激闘を制し、初の世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)代表に決まった。男子73キロ級は16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)金メダルの大野将平、女子57キロ級は世界女王の芳田司が制覇。大会後の強化委員会で最重量階級を除く世界選手権代表14人が決定した。

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最後は意地だった-。丸山は序盤から得意の内股で崩す連続技で攻めたが、阿部も耐えて一進一退の攻防が続いた。場外に出て審判の「待て」がかかる度に大きく深呼吸。延長9分23秒。ともえ投げから崩す浮き技で技ありを奪って、勝負に終止符を打った。「最後は意地と意地のぶつかり合いだった。遅咲きだけど(世界選手権代表への)気持ちの勝負で勝ったことは大きな自信になる」と胸を張った。

これまで阿部の陰に隠れ、昨年8月のアジア大会の敗戦を機に柔道スタイルを変えたことで急成長を遂げた。相手に合わせる柔道から自身の柔道を貫くことに決め、鋭い内股を軸とした「美しい柔道」を追求した。相手の中に入り込んで左足を大きく上げる得意技で、そのキレ味の良さから母校天理大の穴井監督は「日本刀のような鋭さ」と表現した。さらに、投げきる力をつけるために90キロ級の選手らとも組み合って柔道力を強化し、同11月のグランドスラム(GS)大阪大会決勝で阿部に勝利するなど国際大会3連勝。昨年の世界選手権以降、優勝を逃していた世界王者を猛追するライバルとして急浮上した。

昨秋に結婚したことで精神的にも成長した。妻が食事面のサポートをしてくれることで「柔道により集中出来る環境になった」と言う。今大会は「柔道人生を左右する大事な試合」と位置づけ、5日の最終調整では珍しく、81キロ級の兄剛毅の胸を借りた。阿部との直接対決を制し、1番手で世界選手権代表に選出されたが慢心はない。「ここからが本番。世界中の人に強い姿を見せて、東京五輪で勝ちきりたい」。柔和な表情を見せる25歳の苦労人が、1年3カ月後の大舞台を見据えて強い決意を示した。【峯岸佑樹】

◆丸山城志郎(まるやま・じょうしろう)1993年(平5)8月11日、宮崎県生まれ。3歳から柔道を始める。福岡・沖学園高-天理大-ミキハウス。18年選抜体重別優勝、同GS大阪大会優勝、同マスターズ優勝。左組み。得意技は内股。趣味はドライブと釣り。父は92年バルセロナ五輪65キロ級代表の顕志氏、兄は81キロ級の剛毅。167センチ。血液型A。

◆柔道世界選手権の男女代表選考 男女14階級のうち最重量級を除く12階級は、今年の欧州国際大会などの成績と最終選考会の今大会の順位が加味され、7日の強化委員会で決定した。最重量級はともに無差別で争う全日本女子選手権(21日)と全日本選手権(29日)の結果を踏まえて決める。原則、各階級1枠だが2階級で1人ずつ追加できる。20年東京五輪代表候補は各階級2~3人程度に絞られ、選考方法は6月の理事会で決まる見通し。