【ケロウナ(カナダ)24日(日本時間25日)=佐々木隆史】フィギュアスケート男子で五輪2連覇の羽生結弦(24=ANA)が、幻想を断ち切って今季グランプリ(GP)シリーズ初戦に臨む。

同シリーズ第2戦のスケートカナダ(25日開幕)に向けて、本番会場で行われた公式練習で調整した。昨季の世界選手権で敗れた最大のライバル、ネーサン・チェン(米国)の存在にとらわれることなく、自分の演技に集中する。

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公式練習に参加した羽生は、完成度の高さを見せつけた。ショートプログラム(SP)の曲かけ練習では、4回転サルコーやトリプルアクセル(3回転半)などを鮮やかに着氷してノーミス演技。フリーの曲かけ練習でも、4回転ループや連続ジャンプを次々と着氷した。「一発だけに懸けるって感じではなく、1つ1つかみしめるように調整をしてこられた」と、表情に余裕があった。

優勝した9月のオータム・クラシックから約1カ月。昨季の再演となるSPとフリーに大きな変化はないが、羽生自身の中で大きく変化したものがあった。

羽生 世界選手権で負けた時のネーサン選手の強いイメージとずっと戦っていた。彼の幻想と、自分がさらにエフェクトをかけた幻想と戦っていた。すごく焦っている感じだったけど、ちょっと和らいだというか落ち着いてきた。

2位だった3月の世界選手権の悔しさから、今季は大きなプログラム変更はせず、完成度の高さを追い求めている。しかし、オータム・クラシックが終わるまでは、優勝したネーサンの存在が頭の中から離れなかった。「がむしゃらにひたすらノーミス」と焦る気持ちにつながった。

転機は先週のGPシリーズのスケートアメリカ。大会を制したネーサンの演技を見て「自分の演技をしないといけないと思った。彼にはない自分の武器もあると思う」と考え方が変わった。挑戦を表明していた前人未到のクワッドアクセル(4回転半)や4回転ルッツにとらわれず、頭の中がクリアになった。

もちろん結果も重視する。「一番大事なのはルッツを入れるとかではなくて、とにかくファイナルまで行くこと。このスケートカナダで勝ちたい」。幻想に打ち勝ち、まずは自身4度目のスケートカナダで頂点に立つ。