【ソウル5日】フィギュアスケート男子の羽生結弦（25＝ANA）が2020年初の合同取材に応じ、伝説プログラム復活の理由を語った。4度目の出場で初優勝を狙う4大陸選手権（6日開幕、韓国）の公式練習に初合流。この大会から戻す冬季五輪2連覇の演目を寝かせていた「子」と表現し、ショートプログラム（SP）「バラード第1番」を18年平昌大会以来2年ぶりに夢から覚ました。男子SPは7日に行われる。

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羽生は語りたかった。前日に「多々あるけど、また後で」とかわしていたプログラム回帰の理由。平昌五輪後のSP「秋によせて」とフリー「Origin」を、シニア転向後10季目で初めてシーズン途中に変えた。「バラード第1番」「SEIMEI」へ。「この話だけでインタビュー終わると思う」と切り出した。

グランプリファイナルも全日本も前演目で2位。「オトナル（秋によせて）もOriginも自分の呼吸じゃないなと。技術的にも高難度を入れれば入れるほど、スケートの部分がおろそかになってしまった。曲を頭から外してジャンプするのが嫌だった。やっぱりジャンプと音楽の融合が好き。耐え切れなかった」。

2年前にさかのぼる。「五輪が終わってフワフワした気持ちで。ジョニー・ウィアーさん（が踊った、秋によせて）とプルシェンコさん（同Origin）の背中を追う少年のままでいたような」。勝負や追求に徹していない自分がいた。

「確かに全日本のオトナルもスケートカナダのOriginも良かった」。前者は非公認ながらSPの世界最高得点、後者は公認のフリー自己ベストを記録した。「でもやっぱり、自分の演技として完成できないと思ってしまった。苦しくなっていた。2人の背中という理想が高いゆえに」。

全日本2位の後、光が差した。エキシビションで「SEIMEI」を再披露。「滑った時に思った。僕のスケートをしたい。二十何年間やってきたスポーツを考えた直した時、何か違うなと。カバー曲とオリジナル曲のような違いを感じて」年明けに変更を決めた。

公式の曲かけ練習はSPを選択。バラード第1番をノーミスで決めた。「平昌以来、初めて皆さんの前で通した。すごく緊張したのと同時に滑る覚悟をさせられた」。平昌で回避した4回転ルッツも最初は転倒したが、顔は笑っていた。最後は着氷。楽しめていた。

もう後には引けない。「バラード第1番もSEIMEIも伝説として語り継がれるような記録を持ってしまった子たち。できれば寝かせてあげたかった。でも力を借りた時、ものすごく『自分でいられるな』と。これを超えられるものは自分の中ではまだ、ない。もう少しだけ、この子たちの力を借りてもいいかなって」。結論は「自分らしく滑る」。日本メディアの取材時間5分28秒のうち羽生の発言は4分57秒。言いたいことは言った。韓国や欧米のメディアにも、バスに乗る前の追加取材でも同様に言った。唯一無二の羽生結弦に立ち返る。【木下淳】

◆4大陸選手権　国際スケート連盟主催で、欧州以外の国・地域（アメリカ、アジア、オセアニア、アフリカの4大陸）が参加する。第1回は99年で毎年1月か2月に開催。同時期に行われる欧州選手権に対抗し、選手たちに国際経験を積ませることが目的。参加枠は各国最大3人（3組）まで。女子は日本勢が4連覇中（宮原知子、三原舞依、坂本、紀平）。男子は前回大会で宇野昌磨が初優勝。今大会を羽生が制すれば五輪、世界選手権、GPファイナルに続く主要国際大会優勝。国際オリンピック委員会（IOC）の運営サイト「オリンピックチャンネル」は「スーパースラム」と命名しており、男子初。