神戸製鋼が世界的SOダン・カーター(37)を“温存”して全勝を守った。カーターの代役SOヘイデン・パーカー(29)のキックパスをWTB林真太郎(26)がインゴールでキャッチし、今季リーグ初出場コンビでトライを決めるなど、選手層の厚さを見せつけた。

リコーに43-6、ボーナスポイント1点を含む勝ち点5を得て、次節23日は東芝と上位決戦だ。パナソニックは東芝を46-27で制し、勝ち点2差で首位。5戦全勝は2チームとなった。

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大黒柱不在でも、神戸製鋼には柱がたくさんある。11-6で迎えた前半終了間際、今季リーグ初出場の2人が決定的な仕事を成した。カーターの代わりにSOに入ったパーカーが左中間ゴール前から右前方へ、左足でキックパスを出す。WTB林が右タッチライン際を駆け上がり、インゴールでジャンピングキャッチした。あうんの呼吸のホットラインで、試合の流れを一気に引き寄せた。

パーカーはサンウルブズ、パナソニックで実績を持つが、カーターと同じSOだけに出番は減る。しかも今季は開幕前に左膝を負傷。ともすればイラつくブランクを「チームがさらにいいパフォーマンスができるように」と考え、練習参加してきた。

林は絶妙のコンビプレーを「僕は(パスを)呼んでましたし、パーカーも見てましたから」と喜んだ。同大卒の4年目バックスは昨季、開幕前の練習試合で重い脳振とうを起こし、復帰に3カ月かかり、優勝はスタンドから見た。この日は前半23分に先発WTB井関が負傷、途中出場だったが「練習からトライアウトのつもりなんで」と苦もなく2トライを決めた。

あまり試合に出られなくても、出たら結果を出す。ゲーム主将のSHエリスは「みんな、チャンスをくれと“ドアをノック”し続けている」と言い、ディロンヘッドコーチは「私たちの1番の強みは、層の厚さ」とどや顔だ。攻めて7トライ、守って、2試合連続ノートライに相手を封じた。休養十分のカーターも次節東芝戦で復帰濃厚。リーグ2連覇へ、死角がどんどん消えていく。【加藤裕一】