フェンシングと書道の異色コラボが実現し、日本フェンシング協会の公式YouTubeチャンネルで8日午前11時から生配信された。

「アスリートと書道」と題した企画で、達筆で知られる日本代表の男子フルーレ野口凌平(24=ネクサス)西藤俊哉(22=長野クラブ)と女子フルーレの柳岡はるか(25=ANA)が参加。銀座書道教室の上籠鈍牛(うえごもり・どんぎゅう)代表のオンライン指導を受けた。

選手たちの普段は見えない側面を、書道を介して届けたり、大切にしている言葉を可視化することでパフォーマンスやモチベーションアップにつなげる狙いで実施。法大出身の3人は、緊張した時にすることが全員「深呼吸」でそろうほど息ピッタリだ。それぞれ四字熟語に挑戦し、筆を執った。

野口は「廃寝忘食(はいしんぼうしょく)」。

「寝食という、生きる上での基本を忘れるほど何かに没頭する。楽しいこと、好きなことを生きていく上で増やしたいと思い、選びました」

西藤は「万里一空(ばんりいっくう)」。

「高校生の時(日本代表の)オレグコーチに宮本武蔵の『五輪書』を読んでみて、と言われて。(その中にある一節で)1つの物事に対して動揺せず、努力し続けること。自分のフェンシング人生と照らし合わせて、高校時代はマスクの裏に万里一空と書いて、かぶってました」

柳岡は「山溜穿石(さんりゅうせんせき)」。

「(小さな継続が大きな結果につながる)『水滴、石を穿(うが)つ』と同じような意味。もともと運動ができなくて、球技とかミラクルと言われるくらいの動きをしてしまう。それでも、ちょっとずつちょっとずつ、コツコツ努力を重ねて、今ここにいられると思っているので、選びました」

書道経験者で「楷書オタク」という柳岡が見事な筆を披露する中、上籠氏からは特に野口と西藤の一筆目に対し「型にはまらないように」との指摘が入る。劇的に進歩し、それぞれ二筆目は大胆な書になった。

貴重な体験を終えた西藤は「めちゃくちゃ楽しかった。自分と向き合う面でもいいのかな。道具を使う点でもフェンシングとの共通点がある」と感性を刺激された様子。視聴していた、Uber Eats配達アルバイトで話題の男子フルーレ三宅諒から「デリケート野口からワイルド野口へ」と投稿されるなど、心を整える意味でも充実した時間になったようだ。