日本のエースが戻ってきた。世界45位の錦織圭(31=日清食品)が、20年全仏1回戦以来155日ぶりの勝利を飾った。同19位で第7シードのオジェアリアシム(カナダ)に7-6、6-1のストレート勝ち。錦織がトップ20に勝ったのは、19年1月のブリスベン国際決勝で当時16位のメドベージェフ(ロシア)を破って以来、約2年2カ月ぶりとなった。2回戦は同23位のデミノー(オーストラリア)と対戦する。

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今季初勝利にも、錦織は小さくガッツポーズを繰り出しただけだった。態度は素っ気なくとも、「久々の(勝利の)感じはあった。(復帰後)一番、良かった試合だった」と、喜びの言葉は素直だった。

錦織特有の「突然の覚醒」だった。「練習であまり良くなかった。でも、試合に入って、突然、ボールが入る気がした」。けがからの復帰は、いつもそうだ。17年に右手首の腱(けん)を脱臼したときも同じだった。18年4月のモンテカルロで「突然、感覚が良くなった」と、世界3、4位を撃破し決勝に進んだ。

今回の勝利で最もうれしいのは「内容が戻ってきていること」だろう。20年はわずか4大会、計6試合しか戦えなかった。19年8月の全米を最後に、同年10月に右肘の手術を受けて以来、今季が実質的な復帰と言っていい。

その中で、錦織は自分の立ち位置を常に探っていた。自分は戻れるのか、戦えるのかと。相手は、ツアーで最も期待される若手の1人。193センチの長身から強打のパワーで押してくる。その勝利の答えが「このレベルで、何となく戦えているのは感じた」。

また、19年末から改良を続けているサーブも、ようやく一定の成果が出始めた。「今までにはなかったほど良かった」。昨年末に結婚。31歳となったが「疲れもないし、年を取った意識はない」。今年のテーマは「再出発」。エースが、その第1歩を踏み出した。

◆ABN・AMROワールドは、3月1~7日、WOWOWオンデマンドで配信予定。