4年ぶり3度目の優勝が懸かる羽生結弦(26=ANA)が106・98点で首位発進した。

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羽生選手の演技はライブを見に行ったような感覚でした。見ている人の家自体をライブ会場にしてしまう、自然と拳を突き上げて叫んでしまう、そんな雰囲気に満ちていた。プログラムは会場の観客をあおり、参加を促すような振り付けが入ってます。本人も「見ている人とコネクトするため」と。無観客試合も想定できるコロナ禍では、観客との一体感でより魅力を増すプログラムにはリスクもある。それでも、あえて取り組み、雰囲気をつくり出す。羽生選手しかできないような、試みと感じました。

鍵山選手の落ち着きにも目を見張りました。初出場は注意散漫になりがちで、細かい技にミスが出たりしますが、きちんとやり切った。順位に気負わずに、それだけの実力があると気持ちを決めて進んでほしい。宇野選手はアクセルでの転倒は回りすぎで、力が入りすぎた。フリーは考えすぎずに元気に滑れば、結果はついてきます。チェン選手は、最初は心ここにあらず、の雰囲気でした。冒頭の4回転の転倒で「まずい、試合だ」と心身が反応し、スイッチが入った感じ。以降のジャンプは本来の鋭さで、スイッチオンのままフリーにくるでしょう。

後続を迎え撃つ羽生選手ですが、独走もありえます。SPではステップでミスが出ましたが、高揚しているからこその取りこぼしと思います。経験豊富、フリーでは気持ちの抑え方も巧みに、仕上げてくるはず。最終滑走は他選手の得点経過を見ながらジャンプ構成などを変えられる立場でもある。次はどのような「家でライブ会場」を作り出すのか。注目です。(10年バンクーバー五輪代表、11年世界選手権銀メダリスト)

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