SP3位のネーサン・チェン(21=米国)が、逆転で3連覇を飾った。フリーで4回転ジャンプ5本を成功させて、222・03点をマーク。合計320・88点で、2位鍵山に29・11点の大差をつけて、優勝した。

冒頭の4回転ルッツ。ゆったりとした滑りから、力みを感じさせないジャンプでふわりと着氷した。SPで失敗したジャンプに成功して波に乗る。その後も次々と4回転ジャンプを成功。ノーミスの演技で220・03点。自身が持つフリー歴代最高の224・92点には届かなかったが、完成度の高さを見せつけた。「素晴らしい気持ち」。18年平昌五輪5位から3年間、国際大会で負けなしだ。

18年2月、韓国・平昌。五輪初出場の天才ジャンパーはまだあどけなさが残る18歳だった。すでに5種類の4回転ジャンプを装備。金メダルの期待を背負って「米国のあるべき姿を取り戻す」と、フィギュア大国の復権を掲げていた。

しかしSPで3つのジャンプすべて失敗。まさかのSP17位に沈んだ。取材エリアでは「可能な限りすべての失敗を犯した。何が起こったか、わからない」。金メダルどころか、表彰台まで約20点以上の差。絶望的な状況に、ぼうぜんとして視線を宙にさまよわせた。

迎えたフリーは、4回転ジャンプ6本という周囲を仰天させる攻撃的なプログラムに挑んだ。この日の5本さえも上回る大技の連続。天才ジャンパーは意地でフリー1位の得点をマークして、5位まで順位を上げた。前半の演技で少し寂しい取材エリアで「悲惨なSPを忘れて楽しもうと思った」と充実感を漂わせた。

羽生との直接対決は3連勝。通算でも5勝4敗とリードしても「結弦(羽生)はレジェンド。彼がレベルを引き上げ、進化に導いた」とリスペクトを忘れない。謙虚なままの21歳は、4年前からの成長を、北京五輪で示す構えだ。