フィギュアスケート女子で2大会連続オリンピック(五輪)を目指す坂本花織(21=シスメックス)が、ハプニングを乗り越えて首位発進した。今季初戦となる地方競技会「げんさんサマーカップ」(滋賀県立アイスアリーナ)に出場。演技中に曲が2度止まりながらも、ショートプログラム(SP)で73・74点を記録した。シニア1年目だった18年平昌五輪は6位入賞。22年北京五輪につながる大切なシーズンをたくましくスタートさせた。

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初戦の緊張は思わぬ形で切れた。きょとんとした表情の坂本が向かったのは、ジャッジ席だった。1カ月ほど前に完成した新SP「グラディエーター」でダブルアクセル(2回転半)を成功。続く3回転ルッツ…へと助走に入ったところで曲が止まった。「もう笑けてきちゃう。びっくりした」。以前の合宿で「何かトラブルが起こったらレフェリーのところへ」の忠告を思い出し、曲の途中から再開できるように申告した。

想定外はこれで終わらなかった。ジャッジ席から中野園子コーチが見守るリンク際へと進むと、途切れた少し前の箇所から曲が流れ始めた。今度は跳べなかった3回転ルッツを見事に成功…のはずが、また止まった。またジャッジ席、コーチ席を往復し、最後はモバイル端末まで持ち出して三たび演技。この日3度目の流れからルッツを成功させ、演技後半のフリップ-トーループの連続3回転ジャンプも決めた。「最初は緊張感。今度は『最後までかからなかったらどうしよう』という焦りが100%」。それでも73・74点の高得点が表示され「物(CD)は何回も、車とかで流れていて、多分大丈夫だった。『73(点)って出たけれどいいのかな?』って、ちょっと戸惑っています」と不思議な感覚で受け止めた。

シニア1年目だった4年前は「これじゃあオリンピックの“オ”の文字も見えない」とつぶやいたシーズン初戦。だが、世界での実績を積んだ今は違う。「ある意味、いい経験ができたので、まあ良かったんじゃないかな」。ゴールは五輪出場3枠入りではなく、その先にある。【松本航】