06年トリノ五輪(オリンピック)女子の金メダリスト荒川静香(39)が、約2年ぶりの開催実現を神妙に喜んだ。

ショーの序盤から最後まで、個人からグループナンバーまで氷上でフル回転。しっとりと舞い、代名詞のイナバウアーで魅了した演技以外では出演者を明るく引っ張った一方、通し稽古が終わった後の記者会見では、新型コロナウイルス感染が再拡大している中での開催について、昨年は中止を余儀なくされた公演の復活について、真剣な表情で語った。

「世の中の状況が大変な時ですので、少しでも安全に。そしてまた元気が届くようにするために、私たちができること、考えられる最善を尽くして開催を決定しました。この(27~29日の)3日間のショーが本当に安全に、何よりも楽しく過ごし切れればと今は思います」

「昨年は、まだ安全に安心に開催するという方法が見いだせなかったので断念したんですけれども、少しずつ、この生活の中でどのようにしていけばいいのか分かってきて開催する運びになりました。1年間、アイスショーがほぼない中でスケーターたちは活動の場を失いました。少しでも活動の場を持てたら、そしてスケートファンの方々にも生で、近くで見ていただいて、それが皆さんの活力にもなれば、という願いを込めて。選手にとっても大事な五輪シーズンの前のショーになりますので、1つでも場数を。ここから何かつかんで帰ってもらえるような、成長の場にもなれば。けがなく3日間のショーをできればいいなと思っています」

22年北京五輪を目指す選手へのエールを求められると、15年前の金メダリストは“金言”を送った。

「これまでの五輪シーズンとは全く違った挑み方になります。難しい中で見えてくるもの、想定されているものがあると思うんですけど、みんな同じ状況下で最善を尽くしてほしい。自分の状況と常に向き合いながら、難しい、ということよりも、この状況に利点を見いだすことを考えて頑張ってほしいなと思います。チャンスがある限り、そのチャンス、希望に向けて最善を尽くしていくことが後悔ないシーズンにつながると思います。プラスに物事をとらえ、切り替える。できる限りのことをしてほしいな、というのが今の1番の願いです」

公演は29日まで計5公演の予定。男子は宇野昌磨、田中刑事ら、女子は坂本花織、宮原知子、樋口新葉ら北京を狙う現役トップ選手のほか、オリンピアンの本田武史や安藤美姫、鈴木明子、村上佳菜子らが2年ぶりに復活した舞台に再結集し、共演する。【木下淳】