ショートプログラム(SP)7位と出遅れていた鍵山優真(18=オリエンタルバイオ/星槎)が、初参戦の海外GPで大逆転優勝を遂げた。

自己ベストを更新するフリー197・49点、合計278・02点で上位6人をごぼう抜き。現行GP史上最大17・36点差をひっくり返した。オリンピック(五輪)2大会出場の父正和コーチ(50)の言葉で立ち直り、初のGPファイナル(12月、大阪)出場にも前進。次は第5戦フランス杯(19~21日、グルノーブル)に出場する。

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記憶にない。だが確かに鍵山は氷上でガッツポーズを繰り返していた。最終組にも残れなかった7位からのフリー。冒頭の4回転サルコーから、後半に初めて組み込んだ4回転トーループまで全て決めた。「アドレナリンがたくさん出て思い出せない」無心の舞いを完遂し、結果を待つ。SP首位で18年平昌五輪4位の金も、昨季ロシア王者のコリヤダも自身に届かない。真ん中に座ったメダリスト会見で「自分が1位になったことをさっき知って、すごくビックリ」と驚いた。

昨季、初出場で銀メダルに輝いた世界選手権のフリー190・81点を6・68ポイント更新。一方でSPは自己最高から20点以上も低く、首位と17・36点も水をあけられた。一夜明けても「心の奥底に不安がこびり付いていた」。ようやく開き直れたのは公式練習の後だった。オリンピアンの父正和コーチから声をかけられる。「立場とか成績とか関係なく、練習してきたことを頑張るだけだよ」。文字にすれば変哲のない言葉でも、息子の心を的確に射抜いた。気が楽になった。

世界2位の重圧。優勝しなきゃ、いい点を出さなきゃ。その全てを「肩から降ろして、一から挑戦者の気持ちで」滑った。挑戦中の4回転ループもSPの低迷を受けて回避。欲張らずとも「昨季とほぼ同じ構成で(自己ベストより)7点くらい上がった。そこはうれしい」と悪夢から覚めた。

大会前には、このイタリア古代ローマが舞台のフリー曲「グラディエーター」を改良。力強さが増す音程に調律した成果も、父の助言通り、練習通りに演じたら自然と出た。03年に現行制度となったシリーズでSP7位からの逆転Vは06年スケートカナダのランビエル以来15季ぶり。17・36点ビハインドからは、通算100戦を超えるGP史の中で最大のまくり劇だった。

22年北京五輪テスト大会アジアンオープントロフィー(10月、中国)に続く国際大会2連勝。次戦はフランス杯だ。初のGPファイナル進出に近づいたが、この18歳は浮かれたりはしない。「表彰台を目指す五輪では今回のような逆転優勝はできない。次はSPからまとめないと」。シニア1年目だった昨季の挑戦者魂を取り戻した。【木下淳】

 

◆GPシリーズの大逆転V 現行制度となった03-04年シーズン以降、順位ではSP7位からの優勝が最大。04年スケートカナダでサンデュ(カナダ)が11・98点差の7位から優勝し、2年後の同大会でもランビエル(スイス)が7位から14・35点差をひっくり返した。鍵山は3人目。14年フランス杯ではコフトゥン(ロシア)が6位から14・67点差を逆転したが、点差も鍵山の17・36点が最大幅。