北京五輪代表1枠を争うアイスダンスで、結成2季目の村元哉中(かな、28)、高橋大輔(35)組(関大KFSC)がリズムダンス(RD)2位と出遅れた。

序盤に2人そろって転倒する痛恨のミスがあり、63・35点を記録。4連覇を目指す小松原美里(29)、尊(30)の夫婦組(倉敷FSC)が68・16点で首位に立ち、その差は4・81点となった。運命のフリーダンス(FD)は25日。残り1回の演技に、互いが夢を託す。

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意識的に作った笑顔で、高橋は悔しさを何とか隠した。得点発表を待つ「キス・アンド・クライ」。今大会に限りサポートを受けるシングル時代の恩師、長光歌子コーチと言葉を交わした。取材エリアで内容を問われて、首を横に傾けた。

「……。悔しすぎて、耳に入ってこなくて…」

直前の5分間練習で、従来と違う緊張感に包まれた。1枚の五輪切符を争う小松原組を11月のNHK杯で初めて上回ったが、アイスダンスの経験値では劣る。こだわる和の演目「ソーラン節&琴」の冒頭、高橋が村元の脚の下へと潜る振り付けでバランスが崩れた。

ほころびは尾を引き、ステップで脚が絡まった。2人は氷に体を打ち付け、コロナ禍で拍手が定着した会場が悲鳴に包まれた。出来栄え点で3・49点、転倒で2点の減点。失った5・49点は大きく、村元は「『やっちまった』という感じ。普段しないミスなので、ちょっと動揺して、引きずった」と正直に振り返った。

今季、小松原組と唯一の競演となったNHK杯のFDでは順位で1つ上回った。その際の得点差は4・69点。4・81点を追うFDも3番滑走となり、先に演技することになる。夢の五輪代表へ大きなアピールとなる初優勝に向けて、失敗を引きずることはできない。

村元 何点差とかよりも、自分たちの演技に集中すれば、結果がついてくる。

高橋 失うものはない。攻めた気持ちで、思い切りやりたい。

たった2年前、高橋の主戦場はシングルだった。ゼロから成長を続けてきた「かなだい」は、後ろを向かずに前へ進む。【松本航】