ショートプログラム(SP)2位の樋口新葉(20=明大/ノエビア)が2位となり、初となる北京オリンピック(五輪)出場を決定的とした。

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午前の公式練習で不調そうだったが「入れることに迷いはなかった」と冒頭、大技トリプルアクセル(3回転半)に挑戦。着氷が乱れて減点となったものの、その姿勢が大きなミスなく演じ切る推進力となった。

国際スケート連盟(ISU)非公認ながら、フリー147・12点、合計221・78点ともに自己ベストの滑り。五輪という獲物を仕留めにいった「ライオンキング」を舞い切った。演技を終えた瞬間は「やったぁ! やったぁ!」と何度も叫び、リンクサイドへ戻ると岡島功治コーチと抱き合って号泣した。

会見では「緊張で足が震えていました」と今度は満面の笑みだ。大会前から「五輪に挑むのは今回で最後」と覚悟を決めた全日本で2位となり、翌26日の発表を待つ身だが、北京切符をほぼ手中にした。「4年前と比べものにならないくらい力を発揮できた。精神的に成長できた」と万感の思いを口にした。

言葉通り、前回18年平昌五輪の代表最終選考会となった全日本では4位に沈んで2枠を逃した。「4年前は勝つことだけを考えていて、すごく狭い気持ちの中でスケートしていたと思う」と振り返る。今は、いい意味で「余裕がない」「焦りがある」。それが奏功した。「スケート本来の楽しさや面白さが感じられないまま試合に向かっていた」当時と今は違う。観客とつながれた自負がある。

「もっともっと大きな舞台に立てるのであれば、自分のやりたいことを出し切りたい。(五輪に)行けるかどうか決まっていないけど、自分が持っているものを最大限生かした試合にしたい」と先を見据えた。4年前の悔し涙は、うれし涙に。あとは正式に夢がかなう瞬間を待つ。【木下淳】