体操男子で五輪個人総合2連覇など数々の偉業を誇った内村航平(33=ジョイカル)が14日、都内で引退会見を行った。代名詞ともされる大好きなチョコレート菓子「ブラックサンダー」にも話題が及んだ。前体操担当の吉松忠弘記者が“ルーツ”を振り返る。

    ◇    ◇    ◇

記憶が確かであれば、08年北京五輪の代表が決まるNHK杯だったような気がする。14日に引退会見を開いた体操の内村航平は口が重く、何を聞いても「そうですね」、「いや」、「はい」だけ。それも、体操の技術や採点の話で、この答で、それ以外の問いは、全くはなも引っ掛けなかった。

内村は19歳で初代表。体操ニッポンの新星の言葉が「はい」、「いいえ」だけでは、報道陣もほとほと困る。手を替え品を替え、「美しい体操とは」、「E得点を挙げるためには」などと、20分ほど体操の質問を続けた。

そして、ようやく内村の言葉が少しなめらかになり、答も単語ではなく、文章になった頃だ。筆者じゃなかったことが情けないが、ライバルのスポーツ紙の記者だった。おもむろに「試合前に必ず食べるものとかある?」といった類いの質問だったと思う。そして、そこで飛び出た答が、内村と言えばの代名詞、有楽製菓の「ブラックサンダー」だった。

20分以上かかってようやく手にした「ブラックサンダー」。しかし、この日の引退会見では、内村の答は即答だった。「勝負飯でブラックサンダーは有名ですが、今日の勝負飯は?」という問いに、「ブラックサンダーは勝負飯じゃないですよ。お菓子です」。あの20分から13年。成長ぶりは、さすがのプロ対応だった。