【モンペリエ(フランス)21日=松本航】フィギュアスケートでアイスダンス転向2季目の高橋大輔(36)が、9年ぶりに世界選手権へ帰ってくる。シングルで10年に初優勝を飾り、過去8回立った舞台に、村元哉中(かな、29=ともに関大KFSC)とのカップルで初出場。この日から始まった公式練習では、午前の枠に姿がなかったが、25日のリズムダンス(RD)へ調整中。日本勢過去最高の11位(18年の村元、クリス・リード組)を更新する10位以内に入り、来季の出場枠2を目指す挑戦が始まる。

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気温12度と肌寒さが残る南フランスのモンペリエに、世界の実力者が集い始めた。同国で盛んなハンドボールの地元クラブなどが使用する大型アリーナ。渡航を考慮し、この日午前の練習を回避した村元、高橋組だが、世界最高峰の舞台の準備はすでに整っている。

昨年末の全日本選手権は小松原美里、尊組に1・86点及ばず2位。目標だった北京五輪切符を逃した翌日のエキシビションで、高橋はシングル時代に二人三脚で歩んだ長光歌子コーチ(70)から声をかけられた。

「何か意味があるんじゃないの?」-

コロナ禍で現在師事する米国のズエワ・コーチの来日がかなわず、大事な五輪代表選考会で支えてくれたのが、長光コーチだった。

シングル時代からエッジ(スケート靴の刃)の使い方に定評があったが、同コーチは「きちっと1からアイスダンスの滑りを学んで、練習したんだな」と間近で実感した。その時、高橋は35歳。全てのエネルギーを注ぐと、昔から1日眠りこけることがある。今季の海外遠征後も寝込み、村元やズエワ・コーチを驚かせた。そうして積み上げた2人の調和は、長光コーチの目にも「拍に合わせて滑る大輔に、哉中ちゃんの表現が合わさる。2人の個性が出ている」と映った。

気持ちは世界選手権を見据えて切り替えた。高橋は「トップ10に入りたい」と誓い、さいたまスーパーアリーナで行われる23年大会の出場2枠獲得を狙う。18歳だった04年の初出場から18年。「かなだい」の可能性を、世界に見せつける。