27年間戦い続けた“レジェンド”がコートに別れを告げた。バスケットボールBリーグ1部レバンガ北海道の折茂武彦社長(52)が引退試合に臨んだ。ともに切磋琢磨してきた旧友や後輩らに囲まれ行われた試合は、チームナインが80-76でチームレジェンドに勝利。両チームで出場し計42得点を挙げるなど、5408人の観衆の前で最後の勇姿を披露した。

試合後のラストシーン。折茂が観衆の視線を一身に浴びた。コート中央に座り口づけ。これまでの感謝の思いを込めた。「さよならをしました。もうこれが自分がコートで戦える最後の機会だったこともあって。つらいこともうれしいこともあったコートに最後にお別れをした」。最後の勇姿を見に集まった大観衆の大きな拍手に包まれながら、会場を後にした。

前半は赤いユニホームを着てチームレジェンドのメンバーとしてプレー。後半は黒のユニホームに身を包みチームナインの一員になった。第1クオーターから代名詞の3点シュートを決めるなどこの日計42得点。「ちょっとびっくりした。そんなに取ったのかなって。上出来だと思います」と笑った。

試合後に行われたラストショットでは、同学年でかつての戦友佐古賢一監督(51)からパスを受け、3点シュートを成功させた。「グッとくるものがありましたね。常に戦う時はライバルだった。最後彼からパスをもらってすごく胸に刺さる思いがあった。決めきれたというのも神様が僕にくれた最後のプレゼントだったのかな」とかみしめた。

豪華メンバーが引退試合に花を添えた。男子日本代表のトム・ホーバス監督(55)をはじめ、田臥勇太(41)、五十嵐圭(42)、比江島慎(31)などトップ選手が駆けつけ、会場を盛り上げた。「本当に楽しくて幸せな時間だった」と感謝の思いでいっぱいだった。

現役生活27年間で挙げた得点は1万238点。試合後のセレモニーでは息子から花束を受け取りねぎらわれた。「この景色を見られるのは最後。コートの中の景色っていいなと思いましたね。あの景色というのは一生忘れない」。レジェンドの心に深く刻まれる日になった。【山崎純一】

■佐古監督、熱い抱擁

レバンガ北海道の佐古監督がチームレジェンドの一員として折茂とともにプレーした。かつての戦友と1対1でマッチアップするなど会場を盛り上げた。試合後のセレモニーで花束を贈り、熱く抱擁を交わした。「2度目の青春を謳歌(おうか)したような気持ちになりました。いいパスはなかなか出せなかったですけど、自分が一緒にコートに立てたことが本当にうれしく思っています。折茂、長い間お疲れさまでした」とねぎらった。

<折茂武彦アラカルト>

◆8季連続 96-97シーズンから03-04シーズンまで8シーズン連続でリーグ日本人最多得点。01-02シーズンは1試合平均20・29点で初のMVP。

◆31年ぶり世界切符 94年アジア大会で日本代表に初選出され銅メダル。佐古(現レバンガ監督)らと出場した97年アジア選手権では、準決勝の開催国サウジアラビア戦でチーム最多26得点を挙げ決勝に導き、31年ぶり世界選手権出場。06年にも同選手権出場。

◆驚異の成功率 トヨタ自動車時代の06-07シーズン、スーパーリーグを2連覇し、3点シュート成功率60%という高確率で3度目の3ポイント賞獲得。

◆1万点 11年に7000点、13年に8000点、16年9000点、19年1月5日三河戦の第4クオーター(Q)で日本出身選手初のトップリーグ1万得点達成。通算は1万238点。

◆ギネス 20年1月18日、北海きたえーるで行われたオールスター戦に49歳249日で出場し14得点を挙げ通算9度目のMVP。「Bリーグ・オールスター最年長MVP」としてギネス世界記録認定。

◆最年長出場 最後に出場した20年3月15日川崎戦で49歳306日。無観客のこの試合を最後に、コロナ禍のためリーグ途中で中止。現役引退となった。