東京パラリンピック金メダルで、世界王者の国枝慎吾(38=ユニクロ)が3時間超えの大激戦の末、男子シングルス史上初の生涯ゴールデンスラム(4大大会とパラリンピック)の快挙を達成した。

同2位のアルフィー・ヒューエット(24=英国)に、残り2点で敗戦のところまで2度も追い込まれながら、最終セット2-5から4-6、7-5、7-6の大逆転で初優勝を遂げた。

マッチポイントをフォアのリターンで決めると、国枝はラケットを投げ捨て、両手でバンザイ。その後、何度もガッツポーズを繰り出し、観客席にいた妻愛さんと抱き合った。

銀のトロフィーを力強く掲げると、「夢が現実になった。来年も戻ってくる」と力強く語った。

車いすテニスは、打点の高さを出しにくいため、サービスゲームをキープすることが難しい。その中でも、両者は、ともにサーブに課題があり、両者合わせて26度のサービスゲームを破り合う大乱戦だった。

車いすテニスの世界ツアーは、各大会のレベル分けが大きく変わり、いつからが現在の4大大会かを定義するのは難しい。

しかし、同ツアーを主催する国際テニス連盟(ITF)によると、国枝が獲得した4大大会の総タイトル数はシングルスで27。そのうち、ウィンブルドンのタイトルだけがなかった。

ウィンブルドンの車いすテニスは05年に始まった。しかし、当初は、男子ダブルスだけ。女子のダブルスが09年に加わったが、シングルスには門戸を開かなかった。球が弾みにくい芝でのプレーの難しさと、芝への負担が理由だった。

しかし、16年に大会はようやくシングルスの開催を決めた。ウィンブルドンがシングルスを採用したことで、一般の4大大会と同様の会場で、車いすテニスのシングルスがすべて行われることになった。

国枝は、ダブルスで4度の優勝があるが、シングルスでは19年の準優勝が、ただ1回の決勝進出だった。

バウンド後の球足が低く滑る芝では、パワーがある外国勢が有利。球種やストロークを中心に組み立てる国枝には、最難関のコートだったが、ついに全てを手に入れた。

◆ウィンブルドンテニスは、6月27日から7月10日まで、WOWOWで全日生放送。WOWOWオンデマンドで最大10コートがライブ配信される。