ラグビー日本代表(世界ランク10位)は29日、東京・国立競技場でW杯最多タイ3度の優勝を誇るニュージーランド(NZ)代表「オールブラックス」(同4位)とのテストマッチ「リポビタンDチャレンジカップ2022」に臨む。

過去の対戦成績は6戦全敗。95年W杯で145失点を喫した強豪との一戦だ。

そのNZ代表で148キャップを誇る元主将のリッチー・マコウ氏(41)、世界年間最優秀選手に3度選ばれたダン・カーター氏(40)がこのほど来日。27日、都内で母国を分析した。

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黒のポロシャツを着用した2人が、取材場所の部屋に入ってきた。鍛え上げた腕をさらけ出し、ゆっくりとイスに腰掛けた。

オールブラックスにとって、北半球でのテストマッチ4試合の初戦。7~8月は24年ぶりの3連敗を喫し、過去最低の世界ランク5位を経験した。レジェンドは母国を冷静に分析した。

マコウ氏「OBとして、確かに今年のオールブラックスのプレーは残念に感じました。なぜパフォーマンスにつながっていないのか? それはあまり大きなことではなく、小さなことが影響していると感じました。(勝てない時期に)彼らは積極的にやるのではなく、保守的で、ミスを恐れるようなプレーになってしまっているのを感じました」

カーター氏「私もリッチーと同じように感じています。ただ一番、パフォーマンスを残念と思っているのはオールブラックスの選手。タレント、才能がそろい、スキルレベルもある。『もっとできるのに』という思いがある中で、パフォーマンスを出せていない。これからの4試合で払拭(ふっしょく)し、力を出してくれると思っています」

それでも侮れない相手だ。9月中旬からは強豪のオーストラリアに2連勝。2人も復調の気配を感じる。

マコウ氏「ブレディスロー(オーストラリア戦)の結果が、彼らにとって自信につながっていると思います。確かに外から見ていると(夏の戦いは)残念ではありましたが、ブレディスローが北半球での4試合に対して、いいきっかけになったと思います」

カーター氏「シーズンがヤマ場になるにつれて、オールブラックスは成長している。この数年間、コロナ禍で高いレベルのテストマッチを継続できなかったのも、少し影響を与えていると思います。常に一緒にプレーすることでコンビネーションや自信が生まれる。お互いを信じる気持ちが高まってくるのがテストマッチのラグビー。これからの4試合をプレーをするにあたって、彼らのコンビネーションが上がって成長すると思います」

2人は54-6で圧倒した13年の日本戦に出場。カーター氏は神戸製鋼(現神戸)でプレーし、18年に日本一へ導いた。日本が勝つとすれば、何が鍵を握るか。

マコウ氏「オールブラックスに彼らの思い描いているゲームプランでプレーをさせないこと。うまくいかないようなゲーム展開にすることで(NZは)個人プレーに走ってしまうことがある。そういったゲームに日本ができるのであれば勝機はある。特に今年のオールブラックスはスタートがあまり良くない時に、試合結果にも影響を与えていることがある。裏を返せば日本がしっかりとスタートを切れれば、オールブラックスにとって、タフな試合になると思います」

カーター氏「間違いなくオールブラックスは、日本がどういったプレーをしてくるかは分かっている。日本のスピード感あふれるアタックに対し、体のぶつけ合いのところで圧倒しようとする。日本が勝つためには、フィジカルのところで絶対に引いてはいけない。2つ目はオールブラックスと対戦すると、得点を取れるチャンスが非常に少ない。好機を必ずスコアにつなげる。そのためにボールをしっかり保持する。スキルの精度の部分。しっかりと日本が80分間戦い続けなければ、スコアにつなげられない。イコール、試合に勝つことは難しくなる。少ないチャンスで必ず得点につなげる。それ続ければ日本に勝機はあると思います」

注目の一戦は29日午後2時50分キックオフ。すでに6万5000枚以上のチケットが完売している。【松本航】