パリ五輪でミュンヘン大会以来52年ぶりの五輪メダルを目指すバレーボール男子日本代表「龍神NIPPON」。

9月に開幕する五輪予選「ワールドカップバレー」に向け、フィリップ・ブラン監督(62)は登録37選手を選出した。そのメンバーから若手のホープ3選手にスポットを当て、3回連載で紹介。上編は、イラン人の父と日本人の母を持つイケメンスパイカー高橋慶帆(けいはん、19=法大)が、初のトップチーム入りへの思いを語った。【取材・構成=勝部晃多】

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「ケイハン」。その名前はペルシャ語で「世界」を意味する。イラン人の父と日本人の母を持つ身長193センチ、最高到達350センチの高橋は、胸を張って言う。「自信を持って、すてきな名前だと言えます。自分の個性です」。

だが、幼少期はこの名前がどうしても好きになれなかった。「ハーフですし、周りの人と比べると、見られ方も違ったりする。名前も変に思われたりするんじゃないかと考えて嫌だった」。周囲からの目ではなく、自分自身が、周りと違うことを受け入れられなかった。

そんな思いは、習志野高バレー部時代に変わった。「朝練がないから」という理由で選んだ中学の部活とは、何もかもが違っていた。県内随一の強豪校でもまれる中、両親から譲り受けた“違い”は“武器”になっていた。身体能力と高さを生かしたサーブやスパイクでエースに成長。「3年間をバレーにささげる思い」で打ち込んだ。春高やインターハイにも出場し、注目選手へと駆け上がった。

昨年はU-20代表メンバー入り。着実に階段を上る中、いつしか「世界へ視野を広げられる人になりたい」という思いを抱くようになった。今の夢は、日の丸を背負い、トップチームのコートに立つこと。「両親はこういう思いで名付けてくれたんだなと理解できました」と好きになれなかった名前を、唯一無二の個性と捉えられるようになった。

トップチームには、今回初めて選ばれた。驚きつつも「選ばれて終わりではない」と地に足はついている。攻撃力を期待され、オフェンスに特化したオポジットで選出。同ポジションには世界を知る西田や宮浦らがいる。五輪予選に出場できる14人に選ばれるためには、険しい道が待つが「トップレベルの選手がたくさんいる。プレーを見て、聞いて、感じて、自分の競技力向上につなげていきたい。どう成長して、どう貢献できるか」と、全てを吸収して力とする決意だ。

理想のシーンがある。19年W杯、日本-カナダの最終第5セット。9-9から当時19歳の西田が、5本のサービスエースを決め、日本は6連続ブレークで試合を決めた。高橋は「あれこそ世界のオポジット」と、何度も何度も見返してきた。「試合終盤、トスが集まってマークが2、3枚ついてきても、しっかりと決めきれる。そういう強い気持ちと技術を身につけたい」。底知れないポテンシャルと夢への思い-。その名の通り、世界へはばたく。

◆高橋慶帆(たかはし・けいはん)2003年(平15)10月13日、千葉県旭市生まれ。イラン人の父と日本人の母を持つ。ケガの影響で小2から始めたサッカーを辞め、中2の途中から「朝練がない」という理由でバレー部に入部。習志野高時代にはエースとして春高に3年連続出場し、3年時にはベスト16。法大へ進学し、22年はU-20代表メンバー入り。身長193センチのオポジット。

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