1部で最下位に低迷していた花園近鉄ライナーズが、下馬評を覆し入れ替え戦2連勝で残留を決めた。

試合後の取材エリアに大音響が響く。オーストラリア代表として110キャップを持つSHゲニアがスピーカーを持ち、リズムに合わせて体を揺らせながらロッカー室から出てきた。

時には闘志をむき出しにしてチームを鼓舞してきた男は「我々はデビジョン1(1部)の強度でやってきたから、D-Rocks(浦安)には優位に戦えると思っていたんだ。向こうは(2部で)40点、50点を取って勝ち続けてきたチーム。追わせる展開にして、慣れないゲームにすればいいと考えていた」と笑顔で話した。片手には缶ビール。それをグビリと飲み干し、ご機嫌でスタジアムを後にした。

序盤から優位に試合を進め、前半途中までに20-0とリードを広げる。ゲニアとSOクーパーが操る攻撃陣は、リズムがあった。

リーグ戦で1勝15敗と泥沼にはまったチームとは思えないほど、強さを取り戻した。

後半に一時は6点差に迫られながらも浦安に退場者が出たこともあり、日本代表CTBフィフィタの2本を含む5連続トライで圧倒した。

左アキレス腱(けん)断裂から復帰したオーストラリア代表SOクーパーは攻撃だけでなく、激しいタックルで守備でも奮闘。精神的支柱として残留に大きく貢献し「体のそう大きくない自分が体を張ることで、FWに勇気を与えたかった。自分がやる気を見せなければ、周りの人間を動かすことはできないからね。フィジカルバトルになることは分かっていたから。自分ができないことは、周りにも求めない」などと語った。

この日、3トライを挙げフィフィタには、国内の複数チームが獲得に乗り出している。ゲニア&クーパーのオーストラリア代表コンビはいち早く来季残留の意向を示したものの、フィフィタの去就は流動的。SOガーデンバショップは欧州へ渡り、コーチ陣も新体制になる可能性が高い。

今季限りでの引退を表明している35歳のフッカー樫本敦は「最後の仕事を終えました。楽しく燃え尽きることができた」と充実感に浸った。