柔道男子で東京五輪60キロ級金メダルの高藤直寿(30=パーク24)がeスポーツの社会的な地位向上を訴えた。

4日、都内で開かれたアンバサダーを務めるeスポーツチーム「ALBA E-sports」と、木村情報技術株式会社による会見に出席。世界で5億人がプレーするゲーム「フォートナイト」の世界大会「2023 FNCSグローバルチャンピオンシップ」(10月、デンマーク・コペンハーゲン)に出場するチームメンバーの壮行会を兼ねた会で、「日本のeスポーツシーンは、今まさに分岐点いるのではないかと感じています。スポーツなのか、スポーツとして、きちんと企業や団体、国を挙げて応援してもらえるものになっていくのかと不安になる部分もあります。実際、僕もフォートナイトと出合うまでは、eスポーツはスポーツじゃないよと思っていた1人でもありました。しかし、選手たちと関わっていく中で、やっていることは僕らアスリートと同じだと感じて、応援したいなと思って、今ここにいます」と語った。

世界では有名ブランドとのコラボレーションをする人気選手が出るなど、成長著しい分野にあって、日本は後れを取っているという。22年の国内市場は前年比約1・5倍の116億円になったとされる一方で、依然としてゲームの延長との認識も根強く、支援企業などが伸びていない。

22年1月からアンバサダーに就く「ALBA E-sports」は、その状況を変えようと活動してきた。高藤自身は趣味としてゲームに携わってきたが、就任要請を受けてからは、選手たちの努力などを目の当たりにし、食事の節制などにも取り組む姿を知った。同時に、オンラインで顔を出さないで活動することが国内では主流となっており、発展の妨げにもなっている状況も知ったという。

「『子供の遊びじゃないか』『スポーツとして見えない』など、多くのご指摘があります。今、日本ではeスポーツを育てていかなくてはならない時期なのに、やり方を間違えると、日本だけが世界に置いていかれてしまう。そんな状況になってしまいます。僕は柔道家として、スポーツマンとして、この可能性に満ちた大きな、大好きなスポーツ、eスポーツを日本でスポーツとして、正しく大きくなっていってほしいなと思っています」と熱を込めた。

選手自らが主体性を持ち、社会的な地位向上を促進し、人間としても成長する場として、9月から「ALBA JAPAN SERIES CHAMPIONSHIP SCRIM featurring fortnite」が開催される。この日は世界大会に出場する選手たちも緊張した面持ちで、オフラインの場に出席した。

「選手たち自身が変えようと努力を始め、大きな流れができ始めています。選手たちがこの状況を変えなきゃダメなんだと、ついに動き出してくれたな、そういう感覚です」。柔道で培った世界舞台で戦うメンタルなど「メンター」などの役割も自認する高藤。「彼らの話に耳を傾けていただき、皆さまにいい形で世間に広げていけたら、広げていただいたら幸いです」と望んだ。【阿部健吾】