龍神NIPPON、パリ切符! 涙のオリンピック! 日本(世界ランキング4位)がスロベニア(同7位)に3-0(25-21、25-22、25-18)でストレート勝ちし、パリ五輪出場権が得られる2位以上を確定させた。1992年バルセロナ大会以来、男女を通じて32年ぶりとなる「五輪前年の切符獲得」を成し遂げた。自力での出場も08年北京五輪以来16年ぶりとなる。

出場が決まった瞬間、龍神たちは涙を流して抱き合い、記念キャップをかぶり、集合写真で喜びを爆発させた。アウトサイドヒッター(OH)の石川祐希主将(27=ミラノ)は「本当にうれしいです。最高のメンバーだと思います。強さを証明できたと思いますし、五輪の切符を取ると思ってやってきて、皆さんと一緒に喜べて最高です。言葉にはならないですし、みんなに感謝したい。パリでメダルを取る姿を皆さんに見せたい」。快挙をかみしめる間もなく、早くも72年ミュンヘン五輪(金)以来52年ぶりのメダル獲得へ目を向けた。

今大会は第2戦で格下エジプトに2-0から2-3の大逆転負けを喫しながら、息を吹き返した。起死回生の4連勝。昨年の世界選手権で4位のスロベニアを倒し、通算5勝1敗とし、最終日を待たず2大会連続の五輪出場を決めた。

苦しんだ。ここまで1度も落としていない第1セット(S)から、いきなり追い込まれた。1-2から5連続ポイントを奪われるなど5点ビハインド。救ったのは頼れる主将だった。石川がチームを鼓舞して点差を詰め、迎えた15-16からが3連続得点。1枚ブロックで同点、ストレート方向を向いてクロスに打つ技ありのスパイクで勝ち越し、さらにもう1点を打ち込んだ。最後は24-21からOH高橋藍(22=日体大)が決め、逆転で第1Sを取り切った。

先発は、この日も頼れる面々だった。OHは石川、高橋藍、オポジットは今季から副将を任される西田有志(23=パナソニック)と不動の3枚看板がスタメンとしてコートに立った。ミドルブロッカー(MB)は高橋健太郎(28=東レ)と小野寺太志(27=サントリー)が高さをもたらし、天才セッター関田誠大(29=ジェイテクト)が攻撃をつかさどり、リベロ山本智大(28=パナソニック)がレシーブで救った。

今夏のネーションズリーグ(VNL)で史上初の銅メダル。「21世紀最強」の呼び声高い龍神は、第2Sも接戦をものにした。このセットも序盤からリードを許したが、一進一退の展開から、石川の両軍最速10点目で15-15。さらには西田がスパイクを決めた。たまらずスロベニアがタイムアウト。大声が響いた。

「勝ちたいの当たり前だからな、焦るなよ! やりたいことやっていこう!」

西田の声で、引き締まる日本。ブラン監督からは「ブラボー」が出た。強い。175センチの関田がブロックを決めて聖地が沸騰すれば、途中出場したMB山内晶大(29=パナソニック)もブロック。総力戦でポイントを重ね、石川の11点目でセットポイントだ。24-22から最後は、西田が同じく11点目となるスパイクをエンドラインに沈め、連取し、ガッツポーズ。パリ五輪に王手をかけた。

負けた方が五輪出場権争いから脱落する4勝1敗同士の対決。スロベニアは身長2メートルを超える高さとパワーが武器だったが、今の日本は止められなかった。1つ前の第3試合で米国がセルビアを3-0で下し、日本がストレート勝ちすれば五輪出場権が確定する一戦だった。あと1つ。第3セットも1点を争う、ひりつく試合の流れとなった。勝負強さを物語ったのは中盤からの突き放し。高橋藍のサービスエース、石川、西田のスパイクと役者そろい踏みの25-18で制した。歓喜のコートでは、今年3月に亡くなった21年東京五輪代表のセッター藤井直伸さんの3番のユニホームを着て、同じポジションの関田は涙を流して、喜びを分かち合った。

いばらの道だった。開幕フィンランド戦はフルセットの末、辛勝。続くエジプト戦は2セット先取からひっくり返され、上位陣で唯一の序盤黒星を背負った。開き直る14人。五輪出場圏内に残るラインと目された6勝1敗へ後がない状況に陥ったが、チュニジア、トルコ、セルビア、そして難敵スロベニアと4連勝し、最終日を待たずして32年ぶりの「五輪前年の切符獲得」を達成した。

西田「最高でーーーす! まだ終わってないですけど、一気に疲れが出てきた。皆さんの応援は世界で一番。(女子主将の古賀紗理那)世界一愛しとるから頑張るぞ!」

高橋藍「やりましたよーーー! 1、2セット目、苦しい展開もありましたが、こういう展開をものにできて最高です。もう気持ちで。苦しい状況、自分自身もそうですけど、ここで勝つために人生を懸けてやってきた。それがあふれてきたので、最高のゲームができました。(天国の)藤井さん、やったよーーー! 本当に皆さん、大好きでーす。ありがとうございまーす! さらに日本代表として強くなって必ずメダルを取って、皆さんにいい景色を見せられるように頑張ります」

本来のプレーと自信を、毎日1万人を超える観衆の声援を浴びたホームで取り戻した。8日はプール首位を懸けてVNL2年連続準優勝、今大会6戦全勝の米国(世界2位)と対戦する。目指すパリ本大会のメダル獲得へ、前哨戦も負けられない。

◆パリへの道 パリ五輪出場枠は開催国フランスを含めて12。五輪予選を兼ねるW杯は世界ランク上位24カ国が8カ国ずつ3組に分かれ、総当たりで対戦した。ブラジル(同A)日本(同B)中国(同C)の3カ国で先月30日に開幕。各組上位2カ国の計6カ国が出場権を得る条件下、日本が入った。もし逃せば、来年のVNL予選ラウンド終了時(6月)に世界ランキングで決まる残り5枠に入る必要があった。前年に獲得したことで、今後は腰を据えた強化に専念できる。