グランプリ(GP)シリーズ第1戦スケートアメリカ3位の佐藤駿(19=エームサービス/明治大)が、会心の演技で首位発進した。

国際スケート連盟(ISU)非公認ながら、自己ベストの97・88点を記録し「練習では何回もノーミスできていたけれど、本番では昨シーズンからあまりいい内容ができていなかった。ようやく自分が満足する自己ベストです」とほほえんだ。

大会の規模など関係なく、浅野敬子、日下匡力両コーチが抱き合った。最後のスピン中から拍手は大きくなり、観客席ではバナータオルが揺れた。黒の衣装で演じたリベルタンゴ。初挑戦のジャンルは滑り込みでシーズン序盤に比べて磨きがかかり、そこに4回転-3回転の連続トーループ、高難度の4回転フリップをとけ込ませた。着氷後の流れもスムーズで、緊張感高まる演技後半のトリプルアクセル(3回転半)まで降りきった。午前の公式練習、直前の6分間練習を振り返り「いつも跳びすぎたり、跳ばなさすぎたりする。すごく調子が良くて、試合への持っていき方も良かったです」とうなずいた。

氷上では感情の起伏が少ないことで知られるが、素顔は飾らない大学生だ。この日の演技後に「最近、感情の起伏が出たことは」と問われると「最近か…難しい…」とポツリ。「スケートと全然関係ないんですけど…」と切り出すと、驚きのエピソードを披露した。

「500円のポケモンカード。最後に引いたので、2万円~2万5000円のカードが出ました。その時はすごくテンション上がりました。めっちゃ金ピカ。開けたら『リザードンVMAX【SSR】』でした」

そんな無邪気な一面もありながら、スケートに関しては緻密で妥協がない。10月22日に閉幕したスケートアメリカから帰国後は、練習拠点の埼玉で行われたフリーのみの「AUTUMN KOBATON」への出場を直訴。2週ごとに予定されていた試合の間隔を「圧倒的にフリーのプログラムが滑り慣れていない。試合を積み重ねていかないとダメだと思った」と連戦に切り替えた。次の照準はGP第5戦フィンランド大会(17~19日、エスポー)となり、2季連続のGPファイナル(12月、北京)出場を懸けた大一番となる。4日のフリーも、現在の地力を試す格好の舞台となる。

「フリーは本当に実力であり『後半も気合と根性かな』と思っています。そこも含めて今大会でいい流れを作り、次の試合に臨めるようにしたいと思います」

世界の舞台へ弾みをつける大会にする。【松本航】