フィギュアスケート全日本選手権女子で愛知・西春中1年生の上薗恋奈(13=LYS)が快挙に挑む。

ショートプログラム(SP)6位発進から一夜明けた23日、会場で公式練習に臨んだ。24日のフリーを終えて表彰台に立てば、女子では80年3位の伊藤みどり(小5)以来、43大会ぶりとなる中学1年生以下でのメダル獲得。今月のジュニアグランプリ(GP)ファイナルで3位に入ったジュニア1季目の新星が、2位の山下真瑚(中京大)まで3・70点差の混戦で輝く。

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周囲の顔ぶれが変わっても、上薗は13歳らしからぬ冷静さだった。

午前10時20分から35分間の公式練習。フリー曲をかけての通しでは、ルッツ-トーループの連続3回転から予定構成通りに全7本のジャンプを降りた。「すごかったです」。ジュニアから推薦出場の中学1年生は、世界選手権2連覇中の坂本花織らトップ選手に囲まれながらの練習を楽しんだ。

そんな少女が歴史を変えるかもしれない。

7月1日を境に学年が切り替わるスケート界。6月7日生まれの上薗は、中学2年生が大半のジュニアでもまれた。担当の樋口美穂子コーチ(54)は、かつて浅田真央や宇野昌磨を指導。今季のSPとフリーの振り付けも手がけ、大人びた表現にジャンプが交わる。今大会で表彰台に立てばコーチと同い年で同門の伊藤以来、43大会ぶりの快挙が生まれる。

名前の漢字「奈」には「大きく示す」という意味が込められる。スケート教室に5歳から通い、7歳で本格的に始めた。アイスショーで手を振ってくれた浅田に憧れ、現在はトリプルアクセル(3回転半)も練習中。同門で22年北京五輪代表の河辺愛菜からは「全てにおいて、自分より年上なんじゃないか」と評されるが、大のクレヨンしんちゃん好きで、会場でも、そのぬいぐるみに包まれたティッシュケースを持ち歩く。

SPを終えて首位の坂本が抜け出したが、2~6位は3・70点差と大混戦の最終組。身長158センチの有望株は「楽しんで、自分の演技ができたらいいなと思います」と誓った。力を出し切った先に、新しい景色が待っている。【松本航】