ショートプログラム(SP)首位の坂本花織(23=シスメックス)が3年連続4度目の優勝を飾った。フリーも1位の154・34点を記録し、国際スケート連盟(ISU)非公認ながら自身の今季世界最高得点を上回る合計233・12点。3連覇が懸かる世界選手権(来年3月、モントリオール)代表入りした。

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坂本は決めポーズを解き、力いっぱい左拳を振り下ろした。幅のあるジャンプ7本全てで加点を得ると、最終盤のスピン中に場内の拍手が強まった。「自分との戦いだから、精いっぱいやってきなさい」。演技前の中野園子コーチの言葉通り、高い完成度で2位に23・85点差をつけて言った。

「今シーズンの目標が全日本と世界選手権の3連覇。まずは1つ目をクリアできて、ホッとしています」

全世界のスケーターが背中を追う世界女王だが、日常生活は「フッ軽(フットワークが軽い)」と笑う。6月上旬、姿は兵庫県北部豊岡市の全但バス但馬ドームにあった。行われていたのはソフトボールの兵庫県高校総体。神戸から車を約2時間走らせ、神戸野田高の同期と母校の応援に向かった。卒業から4年。高校時代もソフトボール部ではなく、在校生は自身の卒業後に入学。それでも「(現役部員と)面識はむちゃくちゃある。学校によく遊びにいくから」とほほえむ。

人や縁を大切にし、飾らない人柄は重圧からの逃げ場を作る。今季はグランプリ(GP)シリーズ3連勝を飾り、今大会のSPも2位と8・86点差。国内外の大会に優勝候補筆頭で臨み続ける。この日のフリー約7時間前。公式練習で精彩を欠き、中野コーチからの厳しい言葉に「それ今、言わなくていいんじゃないの?」と反抗した。幼少期からともに歩む同コーチは「それ(感情の起伏)が落ち着いたら、普通にできるのがいつものあれ(パターン)」と明かす愛の指摘。坂本は関係者の肩に委ねて泣きじゃくると、観戦に来た友人と話して切り替えた。

なぜ、勝ち続けられるのか-。答えはすぐに出た。

「経験が一番、自分を支えてくれている。プラス『周りの人がどれだけ支えてくれているか』というのが本当に大事だと思います」

国内での重圧を乗り越えたが、世界に出ても追われる立場は変わらない。来年3月には、2連覇中の女王として世界選手権に臨む。

「3連覇には、もうちょっとスピンだったりを、しっかりしないといけない。完璧な演技を世界選手権でできるように頑張ります」

女王は、自分のスタイルで未来へ進む。【松本航】

上位選手の順位と得点は以下の通り。

 

<1位>坂本花織=233.12点(ショートプログラム=SP1位、フリー1位)

<2位>千葉百音=209.27(S3位、フリー2位)

<3位>島田麻央=202.18(SP7位、フリー3位)

<4位>上薗恋奈=200.69(SP6位、フリー4位)

<5位>三原舞依=199.56(SP4位、フリー5位)

<6位>渡辺倫果=194.88(SP8位、フリー7位)