元世界1位の桃田賢斗(29=NTT東日本)が、2-1で渡辺航貴(24=BIPROGY)を下し、2年連続6度目の優勝を飾った。今大会はパリ五輪選考レース対象外のため、棄権する選手も多い中、日本をけん引してきた意地を示した。
現在の世界ランキングは日本勢6番手の38位。最大2枠の五輪シングルス代表は厳しい立場にあるが、パリをゴールと定めず、目の前の試合に力を注ぐ。女子シングルスは奥原希望(28)の途中棄権により、杉山薫(20)が初優勝した。
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優勝を決め、場内インタビューへ移るまでの数秒の出来事だった。観客席から子どもの高い声が響いた。「桃田、お疲れー!」。コート上の桃田の耳にも届いた。すぐに叫び返した。「ありがとう!」。会場がほっこりした空気に包まれた。「勝ち負けにとらわれず、支えてくださった方々や自分がやってきたことを信じてプレーできている」。勝敗に縛られず、楽しむことに価値を見いだしている。
第3ゲーム中盤にその一端が見えた。大会序盤から背中に痛みを抱えており、「心が折れそう」という瞬間が何度もあった。そんな中、16-8とリードした場面で、1分ほどの長いラリーの末に失点。下を向きかけたが、そこから踏ん張った。「1球でも多く、しぶとく、粘り強く」。続く攻防で相手の逆側へ鋭くスマッシュ。その次はネット際へ落とした。「楽しんで」と心にゆとりがあった。
今大会は多くのトップ選手が棄権した。1年を通じ、ワールドツアーで世界中を転戦するため、疲労は蓄積する。「みんなも、どこかしらを痛めている」。そう察する桃田も、度重なる故障に苦しんできた。ただ、悲観はしない。「できることを探しながら、新しい打開策を見つけてきた」。背中の痛みを丁寧なラリーで補う。そこに充実感を宿らせ、「新しい自分をつくっていく」と思い描く。
パリ五輪の選考レースは残り4カ月。1試合ごとに力を尽くす。「パリ五輪に出たい気持ちもある。でも出られなかったとしても、僕のバドミントン人生はそこで終わりではない。試合に出られる限り、全身全霊でトライしていく」。今大会準決勝で相手の棄権によってかなわなかった世界2位の奈良岡功大との初対戦も、自らの力で実現させる。「海外の試合で勝ち上がれば、いずれ当たる。その時まで楽しみにしておきたい」。楽しみは与えられるものではない。自分で見つけていく。【藤塚大輔】


