【モントリオール=阿部健吾】フィギュアスケートの世界選手権の開幕を翌日に控えた19日(日本時間20日)に女子ショートプログラム(SP)の滑走順抽せんがあり、56年ぶりの3連覇に挑む坂本花織(23=シスメックス)が最終35番滑走を引いた。「ありえない…」。思わずつぶやいた。

世界ランク順で1番手に登場。上位3人の中で最終組の33~35番を決めたが、3分の1の確率で大トリに。苦笑いして着席し、天を仰ぎ、「引きたくなかった」と涙顔になりながらも、最後には「頑張るよ、もう!」と気合を入れた。

2連覇の過去2大会のSPはともに最終滑走ではなかった。世界女王として戦う中で経験は積み上げ、試行錯誤はしてきた。組の6人がリンクで最終調整する6分間練習の後に、最も待たされる立場。準備運動の度合いを下げ、演技の曲を繰り返して事前に聞く事で緊張を和らげるなど。「それでも手が震える」というが、今季の成果が問われる場面がやってきた。

抽せんから約5時間後の午後9時過ぎ、会場とは別の練習リンクで、1人滑り込む姿があった。自らを鼓舞するように打ち込んだ。終えると、雪が降る氷点下の中、スケート靴のまま帰りのバスに乗り込んだ。直前、右拳を突き上げて言った。「頑張りますよ!」。