ラグビーの母国に、フォードあり。

イングランド代表(世界ランク8位)はSOジョージ・フォード(30)が、その右足で全得点をたたき出し、アルゼンチン代表(同6位)に27-10で勝利した。

前半にドロップゴール3連発。試合を通して6本のペナルティーゴールをマーク。キック成功率100%をたたき出した。前半早々に1人の退場者を出し、主将オーウェン・ファレル(31)が出場停止の中、W杯3大会連続出場の男がチームを救った。

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フォードだ。神懸かった右足は、止まらなかった。SNSでは「神様、仏様、フォード様」とあがめ奉った。「ジョージ・フォード劇場」という表現までも上がった。「ラグビーの神が乗り移ってしまう」。そう言わざるを得ない、独壇場だった。

見せ場は、すぐに訪れた。3-3の前半27分。まずは約45メートル付近から、あいさつ代わりのショット。同31分には、約50メートルの長距離弾で、会場の心を一気にわしづかみにした。まだ終わらない。とどめは同37分。敵陣深くに攻め込み、ゴール手前約20メートルでボールを受け取ると、左右に展開すると見せかけて、右足を振り抜いた。驚異のドロップゴール3連発。フォードは「常に用意しています」。虎視眈々(たんたん)と、その時を待っていた。

ドロップゴールで前半を沸かせた後も、その右足が止まることはなかった。後半には5本のペナルティーゴールを成功。チーム全ての得点を右足で決めた。言わずもがなの、キック成功率100%。マスターカード・プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたが「フォワードは、自分たちの最高の武器です」。ドロップゴールを蹴り出すために、ポジションをつくり出したFW陣に感謝した。

14人であっても、飛び道具で上回れることを証明した。前半3分にFLカリーが相手フルバックと頭部がぶつかり、レッドカードの処分を受けた。試合開始早々に1人少ない状況となったが、フォードは冷静だった。「フィールドにポジションがあれば、出来るだけ多く得点しなくてはいけなかったのですが、それがどうにかできました」と鍛え抜いた右足で、数的不利をカバーした。主将ファレルらが出場停止の中、前回大会準優勝のチームにはアクセル全開のフォードがいる。