<東都大学野球:亜大1-0中大>◇第3週初日◇21日◇神宮

 昨春のセンバツ優勝投手亜大・東浜巨(ひがしはま・なお)投手(1年=沖縄尚学)が中大1回戦でリーグ戦初登板し延長10回の末、1-0の完封勝利を挙げた。初回にいきなり最速150キロをマーク。雨が降る中で130球を投げ抜き、被安打5の無失点。8三振を奪った。1年生投手の初登板初完封勝利は、1975年春の東洋大・松沼雅之以来34年ぶりの快挙。

 初完封まであと1人と迫った延長10回裏、マウンドの東浜のもとに生田勉監督(42)が駆け寄った。2死二、三塁のピンチ。ところがどうだ。東浜はこう訴えた。「腹が減りました」。同監督は「よしっ、抑えたら焼き肉の食べ放題に連れて行ってやる」。東浜はその直後、頭上を襲ったライナーに飛びつき、文字通り初勝利をもぎ取った。

 1回から飛ばした。先頭打者は147キロ速球で3球三振。3番打者から奪った三振は、150キロをマークした。「先週の青学大戦で投げられず悔しい思いをしたので、飛ばそうと思ってました」。当初は16日の青学大3回戦が先発予定だった。北原郷大投手(3年=穴吹)が先発を志願したため、監督の判断でデビューは中大戦にずれ込んだ。

 そんな変更にも動じなかった。2月の沖縄・東風平キャンプから取り組んできた課題をしっかり克服していた。高校時代、バックスイングに入るときに左肩が入りすぎ、投球する際、逆に開きが早くなっていた。それを修正しようと「シャドーピッチング500回」を自らに課した。高校ではなかった上半身の筋トレも取り入れた。体重は5キロ増の73キロになった。150キロは自己最速だった。「ボールの重みが増したと思います」。スライダー、ツーシームも生きた。

 「神宮?

 甲子園よりも捕手が近く感じた。投げやすかったです」。東浜は初舞台をこう話した。東京6大学の早大・斎藤佑樹投手(3年=早実)は、開幕投手(東大戦)でデビューし6回を1安打、無失点だった。東京6大学の「佑ちゃん」に対し、東都の「なおクン」として人気を集めるかもしれない。

 生田監督から「なお」と呼ばれ、先輩連には「顔が似ている」とオバマ(米大統領)の名前をもらった。そんな1年生が「焼き肉?

 ごちそうになります」といいながら、こう付け加えた。「自分はまだ成長している段階。これが過信にならないようにしたいです」。34年ぶりの快挙にも、自分を見失うことはなかった。【米谷輝昭】