球界の功労者をたたえる「2022年野球殿堂入り」が14日、野球殿堂博物館から発表され、プレーヤー表彰で元中日の山本昌氏(56)が殿堂入りを果たした。

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山本さんは投手として常に貪欲に、この世界でどう生き抜いていけるのかを考えていた人でした。身長も高いし手も長いけど、球速は140キロそこそこ。その中でどう抑えるか、勝てるかを追求していた。特徴的だったのはスクリューボールだけど、右打者の内角を突くクロスファイア、左打者から遠いアウトローに角度をつけられることが一番の生命線だったと思う。この武器があるから、打者からすれば対になるスクリューが邪魔になって、より効き目が増した。

登板日はさることながら前日ぐらいから「先発が近いんだな」と分かる人だった。普段はよく話すけど、前日からかなり口数が減って、登板日になると、ほぼ会話をしなかった。予告先発を採用していなかった時代は、雰囲気で絶対にバレると思った。当時の中日は先発投手の情報を漏らさないために、練習から煙幕を張ったりしたが、山本さんには意味がないと思うぐらいだった(笑い)。それだけいろんなことを考え、準備を徹底していた。

通算219勝のうち、53勝は自分とのバッテリーで挙げたという記録を知りました。印象に残っているのはノーヒットノーランと200勝の試合。特に200勝投手と組んだのは後にも先にも山本さん1人だけだったので、その節目の試合で受けたのは緊張感も感慨もあった。49歳の最年長勝利の試合は兼任監督でバッテリーは組まなかったが、満塁の好機で代打で出て、押し出し四球を選んだ。何とか記録を達成してほしいという意識も強かった。

でも何よりもすごいのは50歳まで投げたこと。私も45歳シーズンまで現役でプレーしたが、現在51歳になり、去年までプレーしていたことを想像できない。他人には見えない苦労、努力もしたはず。それがなければ50歳まで投げることは到底できない。殿堂入りに際し、あらためてそのすごみを感じました。おめでとうございます!(日刊スポーツ評論家)

2022年野球殿堂入りが発表され、写真に納まる山本氏(右)とヤクルト高津監督(撮影・江口和貴)
2022年野球殿堂入りが発表され、写真に納まる山本氏(右)とヤクルト高津監督(撮影・江口和貴)