4年ぶりのリーグ優勝を目指すソフトバンクは、いよいよ「小久保ホークス」の船出となる。

優勝候補の本命と言われながら、この3年間は悔しい思いをしてきた。昨秋の監督就任時から小久保監督は「勝敗は監督の責任」と言い続けてきた。チームの将としては当然だが、さらに小久保監督はチーム内の「競争意識」をあおりつつも、選手たちが萎縮せずにやりやすい環境を整備してきたように思う。現役時代の野球に対するストイックな姿勢から周囲は「厳しい監督像」を想像していただろうが、就任からこの4カ月でチーム内の監督に対するイメージは大きく変わってきたのではないだろうか。

象徴的だったのは2軍監督時代から見続けてきた緒方、川村、仲田の3選手を育成からしっかり支配下に引き上げたことだ。もちろん一番はキャンプ、オープン戦を通して結果を残し続けた3人の頑張りだろうが、「何としても支配下を勝ち取るんだ」という高いモチベーションを持たせつつ、競争の中に身を置かせていたように思う。支配下入りが目的ではなく、「V奪回」を狙うチームの戦力として認めながら本人たちをその気にさせるように「仕向けて」いったように感じる。実際、3選手はこの戦力の中で開幕1軍メンバー入りまで果たした。

ファジーだったポジションも明確にした。中堅に周東、ユーティリティーだった牧原大は就任直後にセカンド1本を決定。レギュラーは柳田、近藤の2人だけだと言って、チーム内の競争激化を呼び起こしながら方向性を明確にした。

言うまでもないが、打線はさらに厚みを増した。西武からFA加入の山川はオープン戦での打撃を見る限り、ケガなくシーズン出場ができれば40本塁打も期待できそうな仕上がりをみせている。新助っ人のウォーカーも7番あたりを打たせれば、対戦相手にとっても気の抜けない新打線が完成しそうだ。ホークス打線にとって課題だった「1番固定」も期待の周東にメドが立ちそうだ。あれだけの走力がある選手が1番に固定できれば、相手バッテリーだけでなく守備陣にも大きなプレッシャーとなる。そうなると「2番打者」の存在もクローズアップされる。小久保監督は安易に送りバントはしない、と話していることから、多彩な攻撃パターンを絡めて近藤、柳田、山川の主軸につなぐつもりだ。犠打もでき、打撃スタイルをモデルチェンジしてチーム打撃に徹することができる「2番今宮」が適任だろう。ここ2年はケガの離脱があった栗原も開幕に向け状態が上がってきた。小久保監督が目指す相手の嫌がる打線が組めそうだ。

V奪回への不安材料を上げるならば、やはり先発投手陣。開幕2カードの先発6人は有原、モイネロ、スチュワート、和田、東浜、大関となった。さらに石川、大津、板東らも先発候補として控えているものの、いかに長いシーズンを持ちこたえられるか。個人的には左腕大関の奮投に期待したい。背番号も左腕エースの代名詞ともなっている「47」に変更。昨年は開幕投手も務めた。先発定着して3年目。過去2年は病気や体調不良で途中離脱もあっただけに、本人もシーズンフル回転の活躍を誓っているようだ。

最大のライバルは4連覇を狙うオリックスだろう。小久保ホークスは敵地・大阪に乗り込んでの開幕3連戦。気持ちよくスタートダッシュを決めてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)