現役時代は近鉄一筋17年で4度の盗塁王に輝き、オリックスで監督を務めた日刊スポーツ評論家の大石大二郎氏(65)が試合をチェック。1番から8番まで大胆に全打順を組み替えた阪神打線の意図を分析しました。【聞き手=松井清員】

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阪神が1番から8番まで全打順を組み替えたのは、低調な打線に強烈なカツを入れるためだろう。本来クリーンアップを打つべき大山、佐藤輝、森下の3人が打率1割台。打線が全体的に良くない中で、どうせ替えるなら大胆にいこうという作戦になったのだと思う。

ここからは想像だが、最初に決めたのは近本の3番ではないか。一番当たっていてかえす役割もできる。では1番は? 大胆に替えるなら、下位でも3割の出塁率がある木浪となったのだろう。2番も中野だと一緒。ここは悩ましかったと思うが、小技もできる梅野を入れ、好機で回ればノイジーや糸原を代打で送るプランだったのではないか。

大胆にいくなら、4番も状態が上がらない大山のままでは変わらない。前日2安打を放つなど、本来の中軸トリオの中で一番当たりがある佐藤輝でとなったのだろう。この日のオーダーは梅津に通算7の0だった木浪を1番に据えたように、はっきりした裏付けがあっての編成ではないと思う。悪いなりに何とか現状を打開したい、ベンチの苦心が見えた組み替えだった。

結果もハマり、3回は2番梅野が同点打を放ち、7回は8番中野が勝ち越し打。特に7回2死二塁は、第1打席で梅津からヒットを打っていた中野を歩かせるとみていたが、勝負してくれるラッキーもあった。敬遠なら9番才木に代打だろうが、ベンチに中野以上の打者はいないわけだから。

ともに2死からのワンチャンスを生かし、虎の子の1点ずつをもぎ取った。だが、今季最少タイの4安打で7試合連続2点以下と低調に変わりはない。梅津のように、真っすぐが速い投手はとらえ切れていない。

先発才木が頑張って救援陣も0で抑えたように、今年も投手力はある。苦しい状況でいかに点を取るかは、ベンチワークが重要になる。選手の使い方、状況に応じた打撃の指示などが明暗を分ける。勝ったことで週明けの巨人戦もこの日に近いオーダーを組む可能性がある。注目していきたい。(日刊スポーツ評論家)

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中日対阪神 2回表阪神無死、遊ゴロに倒れた4番佐藤輝(左)と打席に向かう5番大山(撮影・上田博志)
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中日対阪神 6回裏を終えベンチで白い歯を見せる岡田監督。右は平田ヘッドコーチ(撮影・加藤哉)
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