日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(42)が「伝統の一戦」を見届け、阪神梅野隆太郎捕手(32)、巨人小林誠司捕手(34)の好リードを絶賛した。試合は延長10回裏に虎がサヨナラ勝利。その直前、10回表2死二塁で阪神バッテリーが空振り三振を奪った場面にも着目した。【聞き手=佐井陽介】

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阪神、巨人ともに捕手の優れた力量が投手戦を演出したように感じます。

阪神梅野捕手のリードでしびれたのは同点で迎えた10回2死二塁、加治屋投手とのコンビで吉川選手を空振り三振に仕留めたシーンです。2ボール2ストライクから、最後は内角低め直球で中途半端なスイングを誘っての空振り三振。完全に打者心理の裏をかいたリードが10回裏のサヨナラ劇を呼び込んだと考えます。

阪神側は吉川選手が打席に入る前、マウンドに集まっています。打者からすれば、まともに勝負してくるかどうか分からない場面。そこで阪神バッテリーは2ボール1ストライクからの4球目、低めのボールゾーンに沈むフォークで空振りを奪いました。もしこの1球を見逃していれば、3ボール1ストライク。一塁が空いていることも考えれば、最悪歩かせてもいい配球だったようにも映ります。

そんな1球を振らされて2ボール2ストライク。しかも一塁は空いている。打者目線で言えば、ストライクを投げてくる確率は低いのではないかと考え、ボール球のフォークに対する意識が高まったことでしょう。甘く入るフォークを狙い、真っすぐはファウルで逃げる。そう読みたくなる場面で内角低めに直球が来たわけです。あの場面は阪神バッテリーの完全勝利だったように感じました。

一方、巨人小林捕手の意表を突いたリードの数々もさすがでした。木浪選手から2つの見逃し三振を奪取。5回2死二塁では中野選手に対して5球連続で外角を意識させた後、最後は内角低めのフォークで空振り三振に仕留めています。6回はスライダーへの意識が強まった先頭森下選手を直球で空振り三振。熟練のリードがさえ渡りましたね。

この日の試合時間は延長10回を戦いながら3時間4分の短さでした。巨人菅野投手、阪神西勇投手がともに抜群のテンポで好投を続けられた裏には、両捕手の巧みなリード、状況判断があったと感じます。菅野投手の今季にしても、打者にいろいろ考えさせる小林捕手のアシストが効いているのではないでしょうか。白熱した投手戦。両捕手による打者との駆け引きも存分に堪能させてもらいました。(日刊スポーツ評論家)