風薫る季節になった。阪神は4月末、広島とマツダスタジアムで3連戦を戦ったが、最高の野球日和になった。この球場で好きな光景がある。試合後、取材を終えて記者席に戻るとき、あふれんばかりの人がコンコースをそぞろ歩きしているのが見える。通路は真っ赤に染まり、勝っても負けても、笑顔で帰路に就く。野球を楽しんだ人たちの表情がいつも印象的だ。

 野球場を巡る風景は、すっかり変わった。暗くて怖い。東京ドームにラジカセが放り込まれたのは、衝撃だった。子どものころに抱いていた雰囲気は消え、明るく楽しく、誰もが気軽に足を運べるボールパークになった。甲子園でも今年から新たに、ある試みを行っている。バックスクリーン映像で球団OBの桧山進次郎氏が「くたばれ」コールの自粛を呼びかけている。

 球団幹部は「物投げとかメガホンを投げたり、そういう悪質マナーも排除していきたい」と言う。阪神ファンの応援スタイルも変わってきている。巨人のジャビット人形を引きずる虎党は球場観戦のNG対象で、最近はあまり見ない。相手投手が交代した際に演奏されていた「蛍の光」も数年前から流れない。昭和っぽさが消え、間もなく平成も終わる。若い女性も足を運ぶ時代だ。「味わい」のある野球場であり続けられるか。その変化をとらえていきたい。【阪神担当=酒井俊作】