「毎日のように、問い合わせがすごかったんですよ。『タクシーの色を変えるんですか?』って」。

育成契約で楽天に入団が決まった由規(29)の父均さんが反響の大きさに苦笑していた。仙台市内でタクシー会社を経営。ボンネットに「YOSHINORI 11」とあしらった“由規タクシー”を走らせ続けてきた。青い車体は前所属のヤクルトカラーと勘違いされることも多いが、もともと同社が長年愛用してきた色。楽天仕様のクリムゾンレッドに変える予定は、今のところないという。一方で「岸(孝之)くんに悪いと思って」。ヤクルト時代の背番号「11」だけは、楽天で11番を背負う右腕への配慮から外した。

07年ドラフトで楽天は由規を1巡目指名するも、競合の末にくじで外している。昨年11月の入団会見は報道陣50人が集まった。12月には地元テレビ局の情報番組に生出演。地元球団への加入にかかる期待の大きさは、育成契約の選手としては異例ともいえる数々の事象が証明している。

均さんは「まだ“げたに足を乗せただけ”。やるのは本人だから。頑張ることが、恩返しになる」と冷静に話す。6月、古巣ヤクルトとの交流戦3連戦の初戦は福島・郡山のヨーク開成山スタジアムで開催される。由規の弟貴規さんがBCリーグの福島時代にNPB復帰を目指して奮闘した場所だ。一家として縁を感じながら、復活を信じている。【楽天担当 亀山泰宏】

「由規タクシー」の車内にある直筆サイン
「由規タクシー」の車内にある直筆サイン
宮城の街を走る「由規タクシー」
宮城の街を走る「由規タクシー」